65歳の父はなぜ28歳の息子の命を奪ったのか

「妻と娘を守るため、こうするしかなかった」

今年(2014年)5月下旬、被告の妻が三男に蹴られ、肋骨(ろっこつ)を骨折。「これから外に行って人にけがさせることもできる」。三男はそんな言葉も口にした。

被告は、警察や病院、保健所にも相談を重ねた。

警察と主治医の助言に揺れて

警察からの助言は「入院治療について、主治医と話し合って。危害を加えるようでしたら110番してください」。保健所でもやはり、「入院について主治医と話してください」。

一方、主治医の助言は、「入院してもよくなるとは言えない。本人の同意なく入院させれば、退院後に家族に報復するかもしれない」。ただ、「警察主導の措置(そち)入院なら」と勧められたという。

措置入院とは、患者が自身やほかの人を傷つけるおそれがある場合、専門の精神科医2人が必要と認めれば、本人や保護者の同意がなくても強制的に入院させられる制度だ。

主治医は法廷で、「家族の同意によって入院させた場合、三男は入院についてネガティブに考えると思った。警察主導の措置入院なら、本人の認識を変えるきっかけになると思った」と証言した。

ただ、警察は措置入院に前向きではなかった。被告が相談に行っても、「措置入院には該当しないのでは」との返答。三男は暴れても、警察が駆けつければ落ち着いたし、警備業のアルバイトを続けられていたことなどが理由だった。

いったい、どうすればいいのか――。被告は追い詰められていった。

6月6日、事件は起きた。

この日、被告は1人で病院に行き、主治医に三男の入院を相談。ソーシャルワーカーを紹介されたが、入院については、あくまでも警察主導の措置入院を勧められた。

午後8時半。妻からメールが入る。妻が誤って三男のアルバイト先の仕事道具を洗濯してしまい、三男が「殴る蹴る以上のことをしてやる」と怒鳴っている――。そんな内容だった。

被告は急いで帰宅した。暴れる三男を目にして、110番通報した。

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