やっぱり多様性から程遠い日本人の消費志向

クロナッツがNYから世界へ広がった理由

「ニッチをターゲットにして、本当にうまくいくの?」とか、「最初からある程度の売上げが見込めないと無理じゃない?」などと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれない。

ドミニク・アンセル・ベーカリーのクロナッツ

分かりやすい最新の事例を1つご紹介しよう。クロナッツ®(Cronut®)の例だ。

クロナッツとは、クロワッサン生地のドーナッツ。クロワッサンのように外側はカリッと、中身はミルフィーユ状になっており、高級ドーナツのコシのあるモチモチ感も楽しめるという新食感のハイブリッド・スイーツ。値段は1つ5ドル。

考案したのは、ドミニク・アンセル(Dominique Ansel)さん。

アンセルさんは、100年以上の歴史を持つパリの老舗「フォション」(Fauchon)に7年、ニューヨークのミシュラン3つ星レストラン「ダニエル」(Daniel)に6年も勤めた達人ペイストリー・シェフ。2009年には業界誌「デザート・プロフェッショナル・マガジン」で「全米トップ・ペイストリー・シェフ10人」にも選ばれている。

クロナッツを求めて…開店前から大行列

そんなアンセルさんは、2011年11月、ニューヨークのSoHoに「ドミニク・アンセル・ベーカリー」(Dominique Ansel Bakery)という、小さなベーカリー・カフェをオープン。ごくごく普通の小さなベーカリー・カフェだが、2013年春頃に、オリジナル商品のクロナッツが大ブレイクする。

朝8時の開店時間の1時間前から、クロナッツを買い求めるお客が、店頭に行列を作るようになり(しかも、一人2個までしか買えないという数量制限もできた)、全米、全世界の各種メディアで大きな話題になった。うちのブログで取り上げた記事にも、その後1年ほどの間に写真の使用許可依頼が日本全国の各種メディア数十社ほどから寄せられた。

2013年夏頃には、ニューヨークに、本人の代わりにクロナッツを買ってくるという代行サービスも登場。その料金は、クロナッツ1つ数十ドルから最大100ドル!!にも達した。

こんな話を聞くと、さぞかし多くのクロナッツが売れたのではないかと思われるだろう。

しかし、この大ブレイク中、ドミニク・アンセル・ベーカリーで1日に作っていたクロナッツの数は、たったの200個だった。小さなベーカリー・カフェのためオーブンも小さく、他の商品も作っていたので、クロナッツは1日200個までしか生産できなかったのだ。

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