中国を「虚像」でしか見ていない日本人の盲点

「爆買い」のテレビ取材はなぜ紋切り型なのか

:ノーベル平和賞受賞の劉暁波(りゅう・ぎょうは)さんも、じつは同じ文学部の先輩なんです。でも、大学の授業で、先生が天安門事件について話した時に、200人ぐらいのクラスの半分以上は「何それ?」みたいな感じだったんです。私はなんとなく中学生ぐらいの時に聞いたけれども、そんなにみんな知らないのかと驚きました。

開沼:そうですか。やっぱり知らぬ間にメディアに振り回されて、自分に伝わってきてない情報もあるということへの想像力を持たなければならないと思わされる話ですね。

テレビや新聞が言うことは何か隠していると思っている

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:中国人だと、テレビや新聞が言うことは、ぜったいに何か隠しているなというふうに、みんな思っていることが多いですね。特に、私の同級生とか、今の大学を出ている人だったり、外国に出たことのある人は、大半はそういう考え方を持っているんです。でも、日本に来ると、みんな素直に受け入れているなと感じて、そういう意味では、水越(伸)先生が研究しているようなメディアリテラシーは足りてないのかなとは感じますね。もっと疑ってほしいという部分はあります。

開沼:ただ、3・11以降の日本の状況で言うと、もちろん情報隠蔽、情報統制を肯定するつもりはまったくないけども、疑いすぎることでステレオタイプなものですら自分の中に持てないような状況もあります。「あれも嘘かもしれない、これも嘘かもしれない」となって、混乱して生活の質が下がってしまっている人もいます。

そういう人って最終的には、陰謀論、終末論みたいな極端なニセ科学に走ってしまって、悪徳商法につかまるパターンがあるわけです。「悪徳商法にはまってる状態ですよ」と教えても、そうやって自分の価値観を否定するということに「嘘をついてるんじゃないか、裏があるんじゃないか」という話になってしまうので、そこはすごく悩みどころなんです。

日本と中国の比較でいうと、やっぱり10億人の人をちゃんとグリップしておくというところでの情報の流し方って、やっぱり1億人のグリップとぜんぜん考え方も違ったりするんですか。そういう大きなメディア論みたいなところで、思うことありますか?

:それはすごく難しい質問……(笑)。

開沼:たしかに嘘をつくのはよくないにしても、不信感を全員が持つ社会ってとても不幸な気もしています。「なんでも自由に判断しろ」と言われることって、とてもきついことでもあって……。

:そうだと思います、はい。

開沼:そうであれば、ある程度、委ねられる状態をつくっておく必要がある。それはメディアの情報統制という意味で委ねさせるんじゃなくて、自分たちが委ねられるような情報の環境をどのようにつくるかということだと思うんですけどもね。

:そうですね。中国の話だと、もちろん十数億人が同じことを考えているわけはないんですけれども、共産党が滅びる、滅びると言われる中、まだ実際にぜんぜんそうじゃないということは、ある程度、国全体の目標がうまくつくれている状況だと思うんですよ。

今だと、習近平が話している「中国の夢」って、もちろん階層によって夢の内容が違うんですけれども、なんとなく大きな言葉に惹かれて目標を持てていることは、まあまあ成功なのかなというふうに感じています。農民だったら、富裕層だったら、それぞれまた違う目標があったりするなか、最後はその「夢」というぼんやりした言葉にまとめられたということは、国の統治としては効果があるのかなとは思います。

(後編に続く)

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