中国を「虚像」でしか見ていない日本人の盲点

「爆買い」のテレビ取材はなぜ紋切り型なのか

:そうですね、加担してしまっている。毎日、そういう仕事をしてるなって思います。

いま開沼さんが言っていた、人形を撮るとかの話、普通にあります(苦笑)。災害現場に限らず、どこに行ってもきれいに分かりやすく撮るとか、VTRの全体的なテイストを伝えられるカットをチョイスすることは、ベテランであればあるほどやることだと思いますね。

福島の状況が複雑化しているのと同じように、中国のイメージも複雑化しているんですが、日本のテレビだと、「中学生にも分かるようなニュースを作りたい」ということを言われます。例えば3分のニュースのVTRで、私は今でも怒られるんですけど、「何個伝えることあるんだ! 複雑すぎる! 1個伝われば、もうOKなんだよ」って。できれば、簡単なひと言で言えるような観点でそのニュースのVTRを作ることが、要求されるんです。

だから、福島に限らず、沖縄の問題とかも、分かりやすい言葉と、分かりやすい絵で、分かりやすい結論に導くことがテレビで要求されているのかなと思っています。中国のことも、もちろんそうだと思いますね。

開沼:なるほど。「これも、これも、これもある」と言いたいけれども、最初の「これも」で、終わっちゃうわけですよね。

「1個伝わればもうOKなんだよ」

:「視聴者に入っていかないから1個にしぼれ」って言われてしまう。正直、視聴者はどう見ているのかは、分からないんですけれども。

開沼:AもBもCもあるのにAだけだというのは、たしかに優先順位が高いから何もやらないよりはベターかもしれないけども、やっぱりそれによる弊害も出てくるわけですよね。

:たしかに何もやらないよりはいいのかもしれません。「爆買い」とかを映しているけれども、中国という存在を喚起するだけでも、ある程度の意味があるんじゃないかと自分を慰めたりもしています。

でも実際は、一番分かりやすい観点のAを放送して、視聴率もよく評判もよければ、次はもうAだけでいこうという話になる可能性はあると思うので、まさにステレオタイプの再生産のオンパレードになってしまうと思います。

開沼:なるほど。そこはどうしようもないんですかね?

僕が今、意識しているのは、メディアを分けるということです。シンプルに言わないとだめなメディアと、複雑なことも許されるメディアと。例えば、この対談はウェブに長文が載ることが前提だから、AもBもCも、さらには関係ない話までも入れることができます。そういう情報を欲する人もいるわけです。でも、テレビなんかで3分でしゃべれと言われても、言いたいことなんかほとんど盛り込めないわけで、ましてや30秒ぐらいで切れる話なんて、無理なわけですね。

だから、そこは、メディアミックスを相当意識する。あるいはメディアだけじゃなくて、トークイベントではこれを言えるというように振り分けていくようなことが、答えの1つなのかなと思うんですよね。

:でも開沼さんみたいな方は、メディアで発言力を持っているからできると思うんですね。テレビでいえば、「TVタックル」みたいな番組だと、3分で発言する機会があるかもしれないですけど、私が担当しているニュース番組だとせいぜい15秒とか……。分かりやすく言わないと、もう二度と呼ばれないようなメディアだと思います。

私は、今のところ答えを見出せていなくて、もちろん「こういう中国のニュースもあるから、どうですか?」みたいな提案をしていこうとは思うんですけれども、実際採用されるのは、ステレオタイプなものがほとんど。

あとは視聴者に、自分たちが見ているニュースはステレオタイプ化されているものだということを、どうしたら認識してもらえるのかを考えてみたい。まず、ステレオタイプの存在を認識することが第一かなと思いますね。

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