中国を「虚像」でしか見ていない日本人の盲点

「爆買い」のテレビ取材はなぜ紋切り型なのか

:もちろん中国も日本を、ある程度ステレオタイプとして見ていたところもあったと思うんですけれども、日本が中国のことをステレオタイプで見ているなということは、中国にいたころからもう分かっていました。ただ、60年代、70年代、日本ではこんな好意的に中国を見ていた時代があったなんて知らなかったですね。その好意も本当の中国を認識した上での好意ではなくて、日本の希望を託した好意だったということは、忘れないでほしいなというのはあります。

「爆買い」のテレビ報道の裏側には……

開沼:ステレオタイプがなぜ発生するのかということを、『革命とパンダ』ではだいぶ書かれていますけど、ある面ではそういうふうにステレオタイプ化しないと複雑な現実は認識しきれない部分というのもあって、必ずしもステレオタイプ化は悪いものではないという話もあるわけですね。

:そうですね、はい。

開沼:一方でステレオタイプ化することで、虚像というか、現実からかけ離れたものばかりを見て、現状認識を誤ってしまうという問題がある。

たぶん、それは昔よりも現代のほうが、より情報の流動性や、人同士、国同士のすれ違う場面というのが増えてきていて、膨大な情報化の中で物事を理解するのはステレオタイプ化しないと駄目な場面というのも増えてきているのかなと思います。それは他国の理解もそうだし、自分と政治的な思想が違うような人の理解についてもそうですね。

実際に60年代、70年代の日本における中国イメージの研究から見えてきた「ステレオタイプとは何か」というところと、現代社会との関係性で何か思っていることはありますか?

:そうですね。今はもっとステレオタイプ化を強化しやすい時代になったんじゃないかなと思います。

開沼さんもそうだったと思いますけれども、よく学際情報学府でマクルーハンを読む機会が多かったんですよね。彼が言う「メディアはメッセージである」とは、その時代を支配しているメディアの性質が時代性を決める、というような考え方です。

今はテレビなどの映像メディアが発達しているから、物事を認識するときにイメージの積み重ねが重要な役割を果たしているんじゃないかなと思います。例えば、アメリカの大統領選の話になると、ラジオや新聞が中心の時代だったら、脚の不自由なルーズベルトとか、すごく太ったタフト大統領でも当選できたんですけれども、テレビが出てきて、今はもういわゆる「大統領っぽい人」しか選ばれないようになってしまって、イメージで判断することが多いんじゃないかなと思います。

私も実際、テレビ局に入って、よく言われているのが、「絵」(画面)のチョイスなんですよ。毎日のように、「もっと強い絵がないか、面白い絵がないか」って。そういう絵をチョイスすることが大事だと、編集ではすごく言われるんです。

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