出口治明氏「挫折なんて歴史に山ほどある」

日本人の「大人」に最も足りないのは勉強だ

――それはどういうことでしょう?

簡単に言えば「日本人は勉強していない」ということです。これは各種データを見れば一目瞭然です。たとえば日本の大学進学率は50%ちょっとですが、これは34の先進国が加盟するOECD(経済協力開発機構)の平均(約60%)に比べてかなり低めです。また、25歳以上の大学入学者の割合も、日本は世界の平均より圧倒的に低いし、人口100万人あたりの修士号・博士号の取得者数も同様に低い。つまり、意外に思うかもしれませんが、日本は国際的に見て“低学歴”の国なのです。大学生は勉強しないし、社会人の大学入学者も少ないわけで、特に「大人」が勉強していない。これはデータが指し示している事実です。

――「日本人は勤勉」というイメージがありましたが、違ったのですね……。

勉強していないということは、「ケーススタディを学んでいない」のと同義です。スポーツで言えば「練習が足りない」ということですね。何も知らないと自分が肥大化して「俺が俺が」の発想になったり、的外れな精神論に突っ走ったりしてしまう。しかし、勉強すれば、視野が広がり、自分を相対化する力が養われます。

たとえば、かつてドイツの首相を務めたヴィリー・ブラントは、大変なことが起こったらとにかく旅に出かけ、自分を取り戻すということをしていたそうです。旅というのは外の世界を知り、自分自身を日常から、時間的にも空間的にも切り離す営為です。ブラントは旅に出ることによって「社会民主党の党首」から「一介の旅人」になり、そうやって時間と空間を広げ、物事を外から見つめ直していたのです。悩んでいるところだけに閉じこもっていると、どうしても堂々めぐりになってしまいますからね。

知識や経験は「気分転換のツール」になる


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──なるほど。読書も旅行も己の視野を広げてくれる勉強というわけですね。

要するに気分転換が大事という話なのですが、気分転換にも「ツール」が必要です。勉強をしていろいろなことを知るというのは、つまり気分転換のツールをたくさん手にするということです。

僕は昔から「本・旅・人」が大事と言っているのですが、書物で知見を深め、旅で自分を相対化し、酒を飲んで自由に愚痴をこぼせる友人がいれば、それだけで挫折に対する抵抗力はかなり強くなる。僕も営業部門に左遷されたとき、本・旅・人のおかげで落ちこまずに済み、むしろ「暇になって賢くなる時間が増えた」とすら思えました(笑)。日本中の「一宮(出雲大社や厳島神社など社格の高い神社)」をめぐったり、大学院で講師の仕事をしたりしました。挫折に見える経験をしたとしても、いくつかのツールがあれば気分転換もできるし、その状況を楽しむことだってできると思います。

(構成:清田隆之 写真:菊岡俊子)

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