出口治明氏「挫折なんて歴史に山ほどある」
日本人の「大人」に最も足りないのは勉強だ

ショックで部屋から出られなくなった失恋体験
──正直、出口さんに「挫折」という言葉はあまり似合わないような気もしますが……。
いえいえ、そんなことはありません。人生で初めて味わった挫折は小学6年生のときの「失恋」です。人間は動物です。動物はいいパートナーを見つけて子どもをつくり、自分の遺伝子をコピーして残していくことが、大事な仕事のひとつです。だから、人に恋をしてフラれるということは、人間にとってはとても大きな挫折なのですよ。
──それは具体的に、どんな失恋だったのでしょう?
当時、僕はミホコさんというクラスメートを何となく好きになっていたのですが、当時のことですから全然声などはかけられませんでした。でも、彼女の方を見るといつもニッコリしてくれるのです。それを思いきって親友の男友達に話したら、「俺にもニッコリしてくれるで」と言われ……。つまり、ミホコさんは誰にでも目が合ったらニッコリしていたのですが、それにショックを受け、しばらくは部屋に閉じこもる日々を送りました。つまり、告白すらしていない失恋ということです(笑)。
──世界中の男子が共感する甘酸っぱいエピソードですね。
もっとわかりやすい挫折で言うと、日本生命時代、当時の新社長と衝突して国際業務部長から営業部門に左遷されたこともありました。僕は40代の中頃にロンドン事務所で働いていましたが、そこで「保険業界のグローバリゼーションは不可逆的だな」と確信しました。そのあと国際業務部長になり、「2020年に収益と売り上げの2割を海外から稼ぐ会社にしなければ」と思い立ち、「グローバル20」という計画を役員会に上げたのです。1996年に2020年の話などしたので、会議ではさんざん反対もされましたが、計画自体はなぜか役員会を通ってしまいました。それで僕は張り切って取り組み始めたのですが、そのタイミングで社長が交代してしまい……。