日本は2020年後半再び大きなリスクに直面する 「同調圧力」でコロナ感染を抑えた日本の限界

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緊急事態宣言は解除された。だが、このままでは2020年後半に再び危機がやってくる(写真:つのだよしお/アフロ)

5月25日に緊急事態宣言が解除された。約1カ月半続いた経済活動の自粛が和らぎ、日本経済はようやく正常化の道を踏み出すに至った。新規感染者数が減り、医療体制のひっ迫という危機から脱したことを踏まえた判断だったと言える。3月後半から急速に増えた新規感染者は、4月中旬まで増えたが、5月後半にはほぼ3月中旬の状況に戻っている。

「完全に正しい政策」は難しい

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一方この期間、ウイルス感染を防ぐ公衆衛生政策を徹底するために、経済活動の広範囲な自粛・制限を余儀なくされた。

もちろん、経済活動制限は世界各国で行われており、これは日本だけではない。爆発的な感染拡大が起きたアメリカや欧州でも5月に入ってから経済活動が再開しているが、日本も同様のフェーズ(段階)にシフトしたことになる。今後、各国の経済活動再開がスムーズに進むかが、株式市場の方向性を大きく左右するだろう。

4月の緊急事態宣言から5月下旬に宣言解除に至る、安倍政権の一連の対応についてはさまざまな意見がある。経済活動の自粛が緩み感染再拡大を懸念する声がある一方で、これまでの経済活動制限・自粛が行き過ぎており「もっと早期に自粛をやめるべきだった」との声もあり、両極端である。

これらの見方は、いずれも安倍政権への批判につながるが、双方ともに安倍政権に批判的な政治スタンスが大きく影響しているように見える。一部メディアの世論調査では、安倍政権の支持率低下が示されており、安倍政権批判のムードがやや高まってと言える。

ただ、世界中の感染症の専門家の知見によっても、新型コロナウイルスの正体が未だに判明していないことが多いのだから、完全に正しい政策対応はそもそも難しいのが実情だろう。もちろん、筆者にも完全な正解は分からない。ただ、新規感染者などの客観的なデータに基づき、ウイルス感染と経済活動制限の双方の被害のバランスを考慮した上で、緊急事態宣言解除に踏み出した今回の判断は概ね妥当に見える。

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