ソフトバンクG、格下げの8分後にとった行動 資産売却による負債圧縮方針が評価されず

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ソフトバンクグループの孫正義社長は2020年2月の決算会見で、最も重視する指標を「株主価値」だと強調していた(撮影:尾形文繁)

ソフトバンクグループが格下げを受けて憤激した。

3月25日、格付会社のムーディーズ・ジャパンがソフトバンクグループの格付けをBa1からBa3へ一気に2段階引き下げた。Baは「投機的と判断され、相当の信用リスクがある債務」への格付である。大幅な格下げは、社債発行の利率上昇で調達コストがかさんだり、投資家によっては社債購入を敬遠したりするなど、資金調達に悪影響を及ぼす。

ムーディーズが格下げのリリースをホームページに掲載したのは3月25日18時42分。その8分後、ソフトバンクグループが「ムーディーズの格付けの取り下げについて」と題した“怒りのリリース”を公表した。

「誤った理解と憶測」と批判

きっかけは2日前の3月23日、ソフトバンクグループが自己株取得と負債削減のために、最大4.5兆円の保有資産売却・資金化(資産売却プログラム)を発表したことだった。

ムーディーズはこれを「評価の高い上場株式の一部を売却していった場合、ポートフォリオの資産価値と信用力は悪化する可能性がある」「今の時期に投資資産の大きな部分を現金化すれば、資産はディスカウントされた水準で現金化されることとなり、残る投資ポートフォリオ全体の質と価値はより低くなる可能性がある」などとして、格下げを行った。

一方、ソフトバンクグループは今後1年かけて売却を慎重に実施すること、保有資産(75%は上場株式)の中からいくつもの選択肢を持ちうることなど、さまざまな説明を行ったと強調。「当社が何の熟慮もなく市場で性急に資産売却を行い、さらに財務改善を行わないという、誤った理解と憶測に基づくもの」と、ムーディーズの判断を完全否定した。

「当社の説明を理解していないと思われる情報(格下げ)で市場が混乱することを避けるため」として、格付の取り下げを決めた。格下げ直後に会社がこうした行動を起こすのは異例だ。それだけ納得がいかないということだろう。

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