受注生産だけで売れまくるチーズケーキの秘密 選べる楽しさより、1つの品質だけで勝負する

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販売は日曜日と月曜日だけ。1本3456円の「Mr. CHEESECAKE」はなぜ売れまくるのか(編集部撮影)

これまで3K、4Kと言われてきた飲食業。とくに厨房に立つスタッフについては、低い給金や長時間労働に耐えるのも修行のうち、という考え方が当たり前だった。

しかしお金(モノ)より経験(コト)を重視する考え方や、SDGs(持続可能な開発目標)などより地球的な視野での経済活動が好ましいものだという価値観が若い世代を中心に広まる今、飲食に携わる人の働き方にも変化が出始めている。

Mr. CHEESECAKEも、そんな新しい価値観を土壌に生まれてきた異色のブランドだ。

受注生産で生産できる分だけを売る

実店舗を持たず通販一本槍、受注生産で生産できる分だけを売り切る。扱う商品はチーズケーキのみで、冷凍状態で発送する。

洋菓子として、見た目の美しさ、いろいろな種類のなかから選べる楽しさは重要だ。だから、同社の手法を「ありえない」と考える人は多いだろう。

しかし、そのありえないことが成功し続けている。売り上げや販売量については現在のところ社外秘だが、2020年1月に工房を移転、より量産に耐える体制を整備した結果、さらに進化し、さらに多くの人の口に入るようになった。

ホワイトデー期間限定のsiro Coco Lime。3月1日に発売され、30分で完売した(編集部撮影)

商品は1種類のみと言えども、ハロウィン、クリスマス、バレンタインデーなどのイベント時には、限定商品も売り出す。3月1日には、ホワイトデー限定の「siro Coco Lime」(5400円)を販売。定番の3456円よりかなり高いが、発売後30分で完売した。

チーズケーキと言えば、昔ながらの洋菓子として最もポピュラーなものの1つ。コンビニなどどこででも入手できる一方で、シンプルなため、オリジナリティーも出しにくい。それなのに同ブランドのチーズケーキはなぜそこまで爆発的に売れるのだろうか。

代表の田村浩二氏はフレンチのシェフ出身。フレンチのコースでは、さまざまな素材やソースを使い、前菜から始まる複数の皿によって、味わい・香り・歯ごたえなどの変化を客に楽しんでもらう。

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