ソフトバンクG、投資赤字で岐路に立つ孫正義 投資活動は当面縮小、事業家に回帰するのか

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ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は第3四半期の決算説明会でポジティブな変化を強調した(撮影:尾形文繁)

「潮目が変わった決算でございます」。2月12日、2019年4~12月期の決算説明会で、ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長はそう切り出した。

孫社長が変わったと指摘する根拠は3つある。まずアメリカのスプリントとTモバイルUSの合併が最終段階に入ったこと。次に保有株の時価から純有利子負債を引いた「株主価値」が2月12日時点で、2019年9月末から約5兆円増えていること。最後に2019年10~12月の3カ月間の営業損益が黒字に転換したことだ。

スプリントとTモバイルとの合併は確かに潮目が変わったと言えるだろう。アメリカの連邦地裁が2月11日に合併差し止め請求を棄却。同請求を主導してきたニューヨーク州が上訴を断念したことから、発表から2年近くを経て、ようやく合併が実現しようとしている。

一方、2番目の「株主価値の増大」は、ほとんどが中国アリババの株価上昇によるものだ。5兆円増えたうち、実に4兆円弱をアリババが占める。同社の株価次第では、容易に減少へと転じるおそれがありそうだ。3番目の黒字転換も、黒字とはいえその額はわずか26億円。9カ月間累計では129億円の営業赤字だ。

不振を極める投資事業

そんな中、相変わらず不振なのが、サウジアラビアなどから計10兆円の巨額資金を集めて、主に海外のユニコーンに投資しているソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下SVF)だ。ユニコーンとは企業価値10億ドル以上、創業10年以内のベンチャー企業を指す。

SVFが主体の投資事業は、第2四半期の3カ月間(2019年7~9月)で9703億円の赤字だったが、第3四半期の3カ月間(同10~12月)も2251億円の赤字を計上している。第2四半期は上場を取りやめたアメリカのウィーワークの企業価値が急落。ウーバーなど上場した投資先の株価も低迷した。第3四半期も引き続き、投資先の株価や価値の下落が響いた。

巨額赤字の計上は2号ファンド設立に影響している。昨年8月の決算説明会では「1号ファンド以上の資金が集まりそうだ」と言っていた孫社長だが、今回は「いろいろな反省を含めて、規模を縮小してやるべきだと思っている。1~2年分の資金をブリッジ的に集めて実績を上げ、正式な2号ファンドを立ち上げるのも選択肢」(孫社長)。

つまり、出資を計画していた投資家が巨額赤字に難色を示し、2号ファンドは抜本的な計画変更を迫られた格好だ。

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