「中学受験のトラウマ」を20年抱えた女性の告白 中学入学後もずっと続いた"苦悩"

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中学受験の影響を20年以上引きずった女性。いったい何が彼女を苦しめたのでしょうか(写真:筆者撮影)

首都圏のほとんどの学校で今年の中学受験が終わった。第1志望に受かる子は3~4人に1人とも言われる世界。満面の笑みで終えた子より、悔し涙を流す子のほうが多いのが中学受験の世界だろう。

その悔しさをバネにできるか、挫折として引きずることになるのかの境目は、親でもなかなかわからない。何が正しくて、何が正しくないのか。自分のお腹から生まれてきたわが子といえども、子は子で親とは違った、1人の人格だ。親子であってもわだかまりを抱くことがある。いや、むしろ、親子であるがゆえに苦しいのかもしれない。

「もしかしたら、いまだに母は知らないかもしれません。私の気持ちを……」

そう告白してくれたのは、東京郊外に暮らす女性だった。32歳になった彼女がずっと苦しんできた思いとは、どのようなものだったのか。

本当に自分の意志だったのかという疑問

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待ち合わせの吉祥寺駅に現れたのは目鼻立ちのはっきりとした快活そうな女性だった。「宮本さんですか?」。声をかけられた私は少し驚いた。連載宛に届いたメッセージには、ずっと自分に自信が持てずに生きてきたと書かれていたため、華やかな雰囲気に意外な感じを受けたのだ。

高峯ひろみさん(仮名)、32歳。現在は医療事務の仕事をしているという彼女からメッセージが届いたのは昨年の秋のことだった。

「親は子に質の高い教育を受けさせ、優良企業に就職して幸せな人生を送ってもらいたいという想いで中学受験を考えるかもしれませんが、親も子も幸せの形はそれぞれです。たかが2、3年辛抱すれば未来が保証されると思うかもしれませんが、人格形成期に子どもらしいことができないことがその後どんな代償があるか、伝えたいと思っています」

投稿には、受験当時の鮮明な記憶も書かれていた。内容は、中学受験をきっかけに、自己肯定感が低くなり、就職試験のときにも自己分析という点で自分と向き合えず、ずっとコンプレックスを抱えてきた、というものだった。

2人姉妹の次女として生まれたひろみさん。小学校入学当時は横浜市に住んでいた。家族で東京の郊外へ引っ越すことになったのは2年生のときだった。すでにこのとき、3つ上の姉は中学受験の準備に入っていた。「横浜で通っていた小学校は受験をする子が多く、母も自分が中高一貫校出身だったので、受験させたいと思っていたと思います」。

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