『名選手、名監督にあらず』。その理由は?

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ソフトブレーン 取締役
本社営業本部長兼営業企画・支援部長
長田 順三氏

 「多くの日本企業では、若いころに『売れた』営業マンが、マネジャー、部長、役員と昇進しているところがほとんどです。ただし、『名選手、名監督にあらず』という言葉もある通り、その弊害もあります」
 長田氏によれば、売れる営業マンは、自分自身はさほど意識しなくても、新人のころから有能だったというような人である。いわば「無意識・有能」タイプだ。
 「無意識・有能」な人は、売れない営業マンの気持ちがなかなか理解できない。「なぜキーマンに会えないのか」、「なぜお客様の予算一つ聞き出せないのか」と、自分なら当たり前のことができない部下にストレスを感じるのだ。「オレが若いころは」が口癖になっている人も多い。
 「ただし、最近では、その『無意識・有能』も通用しなくなっています。大きな要因は、ビジネス環境が急速に変化していることです」
 たとえば、昔と今の情報格差である。現在は、顧客自身が多くの情報を簡単にネットから入手できるようになっているため、商品やサービスによっては、複数の企業の比較も簡単にできる。そのため、営業部長や役員が新人のころに通用していた、カタログを持参し、自社商品のラインナップを紹介するだけで成り立っていた営業活動では、顧客を振り向かせることが難しくなっている。
 一方で社内を見れば、スマートフォンやタブレット端末を使う若手社員が増えており、コミュニケーションの手段も変化している。
 「意志決定をすべき内容も年々複雑化しています。『オレの若いころのやり方』では対応できないだけでなく、むしろ戦略を誤ることが多くなる恐れがあります」と長田氏は語る。

営業部長や役員は本気で危機に対応しているか?

 「営業部長や役員が、若いころに直面していなかった課題がもう一つあります。それは、急激な人口減少です。マーケットが縮小することはもちろんですが、さらに大きな課題となるのは、社内に人材がいなくなることです。1人にかかる負担が増える。つまり、このままだとさらに残業が増え、目標が上がるということが日常的に起こるようになります。
 長田氏の説明によれば、たとえば、10人の営業マンがいる営業所で、それぞれが前年比110%の目標を掲げている場合、同じ金額を9人で達成しようとすると一人あたりの目標は122%となり、8人なら137%となる。達成が容易でないことは想像に難くないが、逆に現状維持なら急速に売り上げが減少することになる。
 「しかも、ワークライフバランスやコンプライアンスの波により、残業時間の制約も無視できません。一人当たりの労働時間が短縮された際、目標の達成はより難しくなるでしょう。しかし、右肩上がりが当たり前だった時代に育った営業部長や役員には、こうした切実な課題が、頭ではわかっていても、なかなか緊張感を持ってとらえることができません。なぜなら自分はあと数年もすれば定年だったり任期が満了したりするからです」
 それまで“大過なく”過ごされては、将来を担う人材にとってはたまったものではないだろう。

生産性の向上が急務

ミドル(現場)から組織の改革を進めよう

 前述したような課題を解決し、生き残り企業になるためにはどのような取り組みが必要なのか。
 「『オレの若いころは』というタイプの人材を急に代えることは難しいでしょう。年功序列型の企業や、歴史のある大手企業ではなおさらだと思います。ただしそのような企業でも成功事例はあります。たとえば、部門ごとのプロセスマネジメントの見直しは、全社的な大規模な改革プロジェクトに比べれば、少ないコストで大きな成果を得られます」
 「プロセスマネジメント」とは、その名のとおり、プロセスを管理することで、結果を最大化する手法のことだ。目指すべき結果に至る営業活動を分解し、そのプロセスを見える化し、標準化することにより"売れる仕組み"をつくり、経験の浅い人材でも求められる行動ができるようになる。
 「今後はますます『人のリソース』が限られてくるようになります。これから活躍するリーダーには『最小限の人材で最大限の成果を出せる』能力が不可欠になります」

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