エスノセントリズムを乗り越える 立命館が目指す国際教育とは

制作:東洋経済企画広告制作チーム

近年、急激なグローバル化の進展と逆行するかのように、排外主義的な雰囲気が世界を覆っている。顕著な例がイギリスのEU離脱と、アメリカ大統領選だ。その根底にあるものは、人間の心にある「エスノセントリズム」だと指摘するのは立命館大学の堀江未来准教授。堀江准教授の語るエスノセントリズムとは、そして、立命館大学の目指す「真の国際教育」とは。

立命館大学

すべての人の心にある「エスノセントリズム」とは?

立命館大学 国際部副部長
国際教育推進機構 准教授 博士(教育学)
堀江未来

「エスノセントリズム(自民族・自己文化中心主義)は、『自分が持っている価値観や常識は普遍的に正しいものだ』という思い込みから生まれます。その思い込みから、文化社会状況によって異なる多様なあり方を意識的・無意識的に拒絶してしまうことがあります。この拒絶的態度は、時に攻撃的な言動につながることもあります」

こう語るのは立命館大学の堀江未来准教授。エスノセントリズムへの傾斜でまず頭に浮かぶのは、イギリスのEU離脱やアメリカ大統領選だろう。だが、エスノセントリズムは、もはや全世界的な問題だ。

フランスやドイツでは移民排斥を主張する極右政党が台頭し、ロシアや中国も自国の利益を第一に追求する姿勢を隠そうとしない。日本でも外国籍の人への「ヘイトスピーチ」が問題化している。こうしたエスノセントリズムへの「開き直り」とも感じられる潮流に、どう向き合えばよいのか。

「『自分の常識が正しいという思い込み』と言うと、一部の差別主義者にだけ当てはまることのように聞こえますが、そうではありません。人はみな、自分が偶然にも生まれた場所で、そのコミュニティの『善き一員』となるべく、親や社会から『常識』や『社会のルール』を刷り込まれて育つからです。また、新しい情報を獲得しても、その場では『自分がすでに知っている枠組み』の中でしか物事を認知することができません。それゆえその『枠組み』から外れる他者を即座に理解できないことは当然であり、またその延長として、違和感や嫌悪感を抱いてしまうのは、人間が生まれ持った性質の一つでもあるのです」

だが、そのような偏見を乗り越える知性を持っているのも、人間の特質だ。堀江准教授は「エスノセントリズムを乗り越えるためには、多様性に触れる経験と、そこから学ぼうとする本人の継続的な意志が必要になります。だからこそ学校教育で異文化に対する姿勢を身につけ、多様性の中で自分を発揮する方法を探ることが重要となります」と語る。

ゴードン・オルポートというアメリカの社会心理学者が1954年に発表した『偏見の心理』(『The Nature Of Prejudice』)という本がある。オルポートは同書の中で、文化の異なる人が接触する場において、4つの条件を満たすと、互いへの偏見が減少するという知見を発表している。オルポートの挙げた条件とは、次の4つになる。

  • ①メンバーが対等な立場にある
  • ②メンバーが互いに目的を共有している
  • ③メンバーが互いに協力関係にある
  • ④以上の3つの条件が制度化されている

逆に言えば、集団のメンバーが不平等で、目的を共有せず、互いに非協力的な関係にあれば、その場における偏見は加速度的に強まっていく可能性もある。

立命館では「競争に勝つ」より「文化の違いを超えて学びあう」

堀江准教授が担当する『異文化交流科目』(国際教養科目群)の授業では、この4つの条件を意図的に取り入れ、ルール化している。留学生も日本人学生も同じ条件のもとで履修できるようにし、教室内の言語も英語と日本語の両方。また授業内で目指すゴールを明確にし、互いに協力してそれに向かうように働きかけているという。

何より重要なのは、教室を「競争の場」ではなく「お互いの学びのために協力し合う場」とすることだ。どんなに変わった意見でも、あるいは、間違っているようにみえる意見であっても発言が許される「安全で安心な場所」にすることをつねに念頭に置いている。

「グローバル人材というと、近年の日本では『英語が得意で外国人に対しても物怖じせず、自己主張がはっきりできる人』というイメージがあります。しかし異文化の人と心からの信頼関係を構築するためには、語学力やプレゼン力の前に、まずは相手をオープンなマインドで受け入れ、相互理解のために好奇心をもって自分から主体的に働きかけようとする姿勢が必要不可欠なのです」

堀江准教授が述べる異文化理解の姿勢は、立命館大学の国際教育の各種カリキュラムにも貫かれている。たとえば「キャンパスアジア・プログラム」は、中国と韓国と日本という、密接な関係がありながらさまざまな問題を抱える3カ国の学生が、4年間で各国のキャンパスを移動しながら学び、交流することで、互いの文化や考え方の理解を深めることを目指す。このほかにも、立命館大学と海外、2つの大学の学士号を最短4年で獲得できる「ダブル・ディグリー・プログラム」や、外国の課題に現地の学生と協力して立ち向かう「国際PBL」など、机上の学びにとどまらない実践的な国際交流の場が、立命館大学では学生たちに多数開かれている。

「グローバル化の拡大にともない、あらゆる場で競争が激化し、人々の格差も広がっています。そのような時代にあるからこそ、多様な人々と信頼関係を構築し、文化の違いを超えて学びあうことの重要性を学生たちに教えてきました。自分の当たり前が通じない文化的多様性の中で自らを試すことは一握りのグローバル・エリートのためのものではなく、これからの時代を生きるすべての自立した大人にとって必要な学びなのです」と堀江准教授は力説する。

立命館大学「RPG」「世界とまみれて、世界を変える」

昨年10月、立命館大学がひとつの特設サイトを立ち上げた。その名はや、外国の課題に現地の学生と協力して立ち向かう「RPG(Ritsumeikan Project in Globalization)」。サイトのコンセプトは「世界とまみれて、世界を変える」だ。大学での学びを冒険の旅にたとえ、イラストには5人の国内トップクリエイターを起用し、同大学の特徴ある国際教育プログラムをロールプレイングゲーム(=RPG)の世界観で表現した。学生たちが現在の世界に存在する多様な課題にチャレンジし、クリアすることで、社会を変える力を身につける、というストーリーで構成されている。

ロールプレイングゲームを楽しんだことがある30代、40代であれば、ゲームの中で起こるさまざまなミッションを解決することで、主人公が成長する、という設定には馴染みがあるだろう。グローバル化した現実の世界でも、ゲームの主人公のように、好奇心をもって課題に果敢にチャレンジし、解決できるタフさとしなやかさを持つ人材が求められている。特設サイトは、その人材育成に立命館大学がより一層取り組んでいくということの表明でもある。

エスノセントリズムだけでなく、環境問題や国際紛争、経済格差など、グローバル化が世界にもたらした数々の課題は、年々深刻さの度合いを深めている。そうした課題に力強く立ち向かい、解決に導く「未来の勇者」たちが、立命館大学では着々と育っている。

国際教育における5つのチカラ

  • オープンマインド
  • 主体性
  • クリエイティビティ
  • ストレスコントロール力
  • 好奇心

立命館大学では、単に外国語教育や海外留学プログラムのみを国際教育と定義づけるのではなく、異文化、多文化にまみれるなかで、「オープンマインド」「主体性」「クリエイティビティ」「ストレスコントロール力」「好奇心」といった資質を身に付けることが重要と考えている。詳しくは立命館大学RPGサイトへ。

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