AD

世界経済を引っ張るアジア市場。その中でも、ASEAN地域への注目度は高い。経済状態が良好になるにつれ中間層が生まれ、その人数はASEAN地域だけで2020年までに4億人とも言われている。そこに商機を見出すグローバル企業は多いのだが、ASEAN市場への足場として選ばれている国がシンガポールだ。そこにはさまざまな理由があった。制作:東洋経済企画広告制作チーム

カギはシンガポールのIoTエコシステム
牧野フライスが無人化工場を新設

牧野フライス製作所は、2017年にIoTに対応する無人化工場をシンガポールに建設した。
なぜ同国だったかと言えば、シンガポールには「IoTのエコシステム」があったからだ。
牧野フライス社長の井上真一氏、シンガポール経済開発庁のリム・スウィニェン氏に聞いた。

IoT対応の無人化工場をシンガポールに新設

牧野フライス製作所
代表取締役社長
井上 真一

2017年10月、牧野フライス製作所(以下、牧野フライス)の新工場がシンガポールで竣工を迎えた。場所は既存工場の隣接地で、主要能力もマシニングセンターの生産や金型製造に使う放電加工機の部品加工、組み立てなど、特に目新しいものはない。だが、これまでにない大きな特徴があった。それは、IoTに対応した無人化工場であることだ。代表取締役社長の井上真一氏が語る。

「ロボットや自動搬送車などを活用することで、工作機械の製造工程を自動化します。当社の『ProNetConneX(プロネットコネックス)』と呼ばれるIoT技術を生かすことで、工作機械の稼働状況の管理をリモートで行い、人がいなくても24時間生産が可能な工場を実現します」

これは牧野フライスの生産性を上げる、という話にとどまらない。

「今後は、IoT技術を使ってお客様の機械の『健康状態』をモニタリングすることで、予知保全、予防保全などの支援サービスも提供していきたい。さらには、部材の加工に関するさまざまな提案型のサービスを付加することで、生産性、稼働率、良品率を上げるためのサポートにもつなげていきたい」(井上社長)

この動きを、シンガポール経済開発庁のリム・スウィニェン氏も歓迎する。

「牧野フライスがIoT対応の無人化工場を世界に先駆けてシンガポールで稼働させることをうれしく感じています。シンガポールは、国家として早くから製造業におけるデジタル化の支援に力を入れてきました。その取り組みが実を結び、世界のグローバル企業に選ばれていると自負しています」

実際、過去2年間に、グローバルカンパニー25社がシンガポールに先進的な投資を行い、IoTをはじめとする高い製造技術を備えた最新工場が同国には集積している。

成長著しいアジア市場と「IoTエコシステム」

シンガポール経済開発庁
副次官リム・スウィニェン

牧野フライスがシンガポールに進出したのは1981年のこと。米国の旋盤メーカー、レブロンド社を買収したところ、同社がシンガポールに現地法人を持っていたのがきっかけだった。

「進出の発端は“ご縁”でしたが、市場の拡大が期待できる中国、インド、ASEANを視野に入れた拠点を確保できるという絶好の機会でした」(井上氏)

同社の思惑どおり、その後のアジア地域は成長を続け、今でも世界経済を牽引するほど好調だ。その結果、現在の牧野フライスの地域別売上高の内訳は、日本27.8%に対して、米国31.1%、アジア29.9%、欧州10.1%、その他1.1%(16年度連結)となっている。「アジア地域を牽引するシンガポール(マキノアジア)が、主要な拠点に育っています」と井上氏は強調する。

同社の実績が示すように、巨大なASEAN市場へのアクセスポイントであることはシンガポールの大きな価値となっている。だが、リム氏はさらに「市場に近いだけでなく、生産地としても大いに活用いただきたい」と語る。

「つまり、人、モノ、資金、情報が集まるのもシンガポールの大きな特長です。世界中からロボティクスやIoTに携わるトップクラスのエンジニアがシンガポールに集まっています。特にIoTに関しては、世界の主要なテクノロジー企業やソリューションプロバイダー、コンサルタントなどもシンガポールに拠点を設置しています。上流から下流まで網羅したIoTに関するエコシステムができあがっています」と語る。

それをうまく活用したのが牧野フライスというわけだ。さらに言えば、優れた人材がシンガポールに集まることを、井上氏も高く評価している。

「同質の中からはなかなかイノベーションは起こらないものです。ダイバーシティの観点でも、シンガポールには大きな魅力があります。そこで2010年にはR&Dセンターをシンガポールに設立し、マキノアジアの研究開発体制を強化しました。多国籍の優秀な人材が集まり、新しいビジネスの創出に取り組んでいます」

マキノアジア(シンガポール)の社長(現社長:ネオ・エン・チョン氏)は代々ローカル人材から採用している。海外現地法人のマネジメントは現地に任せるという牧野フライスの方針に、シンガポール人材はうってつけなのだ。

シンガポール発の最先端のものづくりを世界に発信

既存工場に隣接する新工場は、2018年度中の稼働を予定。生産能力も現在の2倍に引き上げられる

今回、新工場の竣工に緊張感もあると井上氏は語る。

「ニーズが多様化する中、かつてのように一つの製品を大量に供給するという時代は終わりました。今では、ニーズにいかに的確に、迅速に応えることができるかどうかが成長の鍵になっています。特にアジアでは、要求が年々高度になっています。当社は『クオリティファースト』を理念に掲げていますが、当社の工作機械の品質はもとより、お客様の加工の品質や効率を向上させることでお客様の経営に貢献するという価値を提供したいと考えています」

リム氏もその考えに同調し、ニーズを先取りすることが大事だと語る。

「テクノロジーがさらに発展することで、今後は縦割りだった産業の境界が曖昧になってくると考えています。つまり、そこにビジネスチャンスがある。従来のお客様はもとより、『お客様のお客様のニーズ』まで見据えることでより多くのビジネスチャンスをつかむことができます」

テクノロジーによって変わりつつある未来においても、リム氏が日本企業に寄せる期待は大きい。

「これからも日本企業の将来的な発展をお手伝いするために、きめ細かく対応できる体制を整えていますので、資本力のあるグローバル企業だけでなく、中堅企業にもIoTの導入を検討いただきたいです」

今後、製造業における顧客のニーズはますます速く変化し、そのスピードについていくためには、IoTが欠かせない時代になってくる。IoTエコシステムを持つシンガポールは、世界の製造業の最重要拠点になる力を秘めている。

シンガポール経済開発庁(EDB)では、オンラインマガジン「BRIDGE」にて、
さまざまな最新情報や事例を定期的に発信しています。
無料定期購読はこちらから。

お問い合わせ

シンガポール共和国大使館参事官(産業)事務所

http://www.singaporeedb.jp