「まさか、有罪判決が出るとは……」
 ある中堅商社の役員A氏はそう言ってうなだれた。
 A氏が勤めるこの日本企業は、2010年に満を持してアフリカ市場に進出。郷に入れば郷に従えと考えたA氏は、現地で評判のいいコンサルタントX氏を見つけ、契約を交わした。
 この契約は大成功を収める。A氏が駐在した5年の間に次々と現地の公共事業を受注。華々しい実績を上げたA氏は日本に復帰し、本社の役員となった。
 その矢先のことだった。コンサルタントX氏が米国の司法当局によって外国公務員への贈賄容疑で訴追された、との連絡を受けたのである。
 実はこのX氏、現地の公務員に賄賂を贈っていた。X氏は米国の銀行を経由して送金していたために、米国の海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act, “FCPA”)に触れていた。FCPAは、贈収賄に使われた資金が米国の銀行を経由していた場合には、その贈収賄が行われた場所を問わず訴追対象にしているのだ。
 そして、米国の司法当局は、A氏とA氏の会社の責任まで追及。A氏個人は懲役1年、日本の親会社には罰金として15億円を求めてきた。
 「当社は一切関与していないし、コンサルタントがそのようなことをしていたことも知らなかった」
 A氏は懸命にそう抗弁した。だが、たとえ直接関与していなくても、コンサルタントを使っていた企業には責任があると通告されたのだった――。

世界腐敗認識指数2014

© 2014 Transparency International. https://www.transparency.org/
協力 トランスペアレンシー・ジャパン

 ここまで盛り上げておいて恐縮だが、実はこれはフィクション。架空の話である。
 とはいえ、この話と同じような事件は実際に世界各地で起きている。FCPAにより日本の企業が摘発され、罰金刑を宣告された事例もある。
 世界に目を転じると、米英などの先進国はもちろん最近は中国も腐敗防止に躍起になっている。過去には、計約1000億円を支払った欧米企業もあるが、公務員の贈収賄に対しては各国とも従来以上に厳しくしていこうとしているのが今のトレンドだ。
 一方、日本はといえば、事の重大性をあまり理解していない企業が多い。ではどうすればいいのか。
 金融情報サービスの通信社としても有名なトムソン・ロイターには、汚職・腐敗に対応するリスクビジネスの部門がある。デューデリジェンスなどの調査から情報収集、リポート作成、トレーニング、さらに各国の要注意人物や法律などを網羅したデータベースサービスや監査プロセスチェック用のソフトウェア開発まで、贈収賄を防止するためのソリューションをフルラインで提供できるのが、同社の大きな強みだ。
 そのトムソン・ロイターによれば、海外贈収賄に関して押さえておくべきポイントは3つ。一つは、前段で簡単に触れたように、近年の世界的傾向を把握しておくこと。もう一つは、リスクベースアプローチという手法でリスクを評価し、対応を決めること。そして最後は、贈賄をした側は加害者だという認識を強く持つこと。
 この3つがなぜ重要なのだろうか――。 

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