組織の効率化はいつの時代にも経営者の課題だ。ランチを他部署の人間ととることで新しいアイデアを生み出そうというアナログな仕組みもあれば、グループウェアを使うことで情報の迅速な共有化を図るというITに根差した課題解決法もある。
そんな中、近年注目度を増している技術が、デスクトップ仮想化(以下、VDI=Virtual Desktop Infrastructure)だ。これはスタッフや社員のPC(クライアントPC)のデスクトップ環境をサーバー上で稼働させるという仕組み(下図参照)。クライアントPCの環境をあらゆるPCやタブレットに映し出せるので、もはや専用の端末は必要なく、時間も場所も選ばずデスクトップ環境を実行できる利便性の高さが魅力だ。
VDIを導入するメリットとしては、いつでもどこからでもネットワーク経由でデスクトップ環境が利用できる。組織が効率化するだけでなく、「ワークスタイル変革」を実現する基盤となりうる。だがVDIのもたらす恩恵はそれだけではない。実は経営者やIT担当者が頭を悩ます「セキュリティ対策」や「運用管理」の面で有効な手段でもあるのだ。
つまり、VDIにより、現場のスタッフは一層アクティブに、そして自由になり、IT管理者は管理・運用がしやすくなる。双方ともに時間的、精神的余裕が生まれるというメリットがあるのだ。
それではどのようなシーンで活用できるか具体的に見ていこう。
まず近年キーワードとなっている「ワークスタイル変革」については、女性のビジネスパーソンを例に紹介しよう。
これまで多くの女性は結婚、出産、育児など、子どもにかかわるタイミングで就労の一時的中断を余儀なくされるケースが多かった。これは企業にとっても優秀な人材を喪失することになり、企業の生産性低下や生産性を補うための一人当たりの負担増といった悪循環の背景となっている。
だが「在宅勤務」が選択肢にあればどうだろうか。VDIを導入することで、育児の合間に社内システムにアクセスしてさまざまな業務を自宅で行えるようになれば、働き続ける女性は増えるのではないだろうか。
もちろん、ワークスタイル変革は女性のためだけのものではない。時間を有効に使えることによって現場スタッフの士気の向上や組織の生産性改善につながり、ひいては企業価値の上昇にも寄与するだろう。
続いてはセキュリティについて解説しよう。
現場スタッフが持ち歩くPCの内部にデータが保存されていると、盗難や紛失による情報漏洩のリスクが課題となる。これはいくら上司が口酸っぱく言っても、現場スタッフが優秀だろうと起こりうる問題だ。盗難された端末に顧客の個人情報が入っていようものなら、企業の根幹を揺るがす大事件に発展しかねない。だがVDIではデータがサーバー側に格納されており、ユーザー側の端末にデータは残らないため万一の事態でも安心だ。
最後にIT担当者の作業低減だ。
IT担当者の業務は、企業という組織に欠かすことのできない、言わばインフラ整備と保守点検だ。ハードウェアの調達やOSのマスターイメージの展開、ネットワークの接続設定、パッチの適用など、いずれが欠けても重大な問題を引き起こす。大企業では事業部ごとに運用方法やOSが異なっているケースもあり、IT担当者の負担は増すばかりだったが、VDIを導入すれば、これらはすべてマスター形式で一括管理が可能になる。スタッフが同じ環境で使うケースなら運用工数を大幅に圧縮し、管理負荷を削減することができるのだ。
VDIに興味を持ったとして、何から始めればいいのか。ここで紹介したいのは無償で提供されるレノボのコンサルテーションプログラムだ。
レノボが企業のITインフラ構築を支援するためにまず行うのは、徹底したヒアリング。当該企業のITインフラ環境の現状を把握して課題を洗い出し、その結果を踏まえて3~5年という期間の中期計画を設定するのだ。
その後、課題への具体的対応策を確認し、優先順位を確認した上で、新規のITインフラを提案するという。つまり、企業は無償でコンサルテーションを受けたのちに、他社との比較検討に入り、決定することができる。
そして、レノボならではの強みは、社員が利用するクライアント端末から、VDIのシステム構築に不可欠なサーバー、ストレージシステム、ネットワークスイッチまで、ITインフラを構築するすべての機器を幅広く取りそろえていることだ。特に同社の主力製品であるx86サーバー「Lenovo System xサーバー」は、優れた並列処理能力と省電力性を兼ね備えたインテル® Xeon®プロセッサーの搭載により、数多くのユーザー環境をきわめて効率よく収容していける。
ここでは、Lenovo System xサーバーを効果的に採り入れ、実際に「CAE on VDI」を導入することによって抱えていた課題を解決し、開発力強化を目指したTOTOの事例を紹介しよう。
グループ全体で2万5000人以上の従業員を抱えるTOTOでは、これまでワークステーションの導入や運用を各事業部に委ねていたため、非効率的なワークステーション利用、煩雑な端末管理、不十分なデータ保全など数々の課題を抱えていた。
商品開発部門においては、開発を支えるCAE(Computer Aided Engineering)環境にも事業部間でのバラつきがあり、すべての開発者が高性能モデルを等しく利用できる状況ではなかった。さらには、開発者が障害対応や更新作業などに対応していたため、本来の業務に集中できない事象までも発生していたのだ。
そこで長期経営計画推進のために、レノボのSystem x CAE on VDIを導入したところ――。