
学生時代、世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」で日本艇の設計チームに所属したホットリンク代表取締役社長CEOの内山幸樹氏。空気力学や流体力学など専門技術を駆使して世界一のヨットを作る。「世界と闘うことに心底ワクワクしました」と語る内山氏。このワクワク感は、後に内山氏を起業へと導いた。
米国でYahoo!が登場し、ITに新たな時代が訪れた頃、内山氏も検索エンジンを開発して1996年に最初の起業、世界との闘いを開始した。しかし後にGoogleが登場、検索エンジン勝負には敗れてしまう。とはいえ、この時に得た技術を用い2000年にホットリンクを創業。Webページに「いいね」を付けられるツールバーを開発し、それでユーザーのお気に入りページを集める「ソーシャル・ブックマーク」サービスを開発した。集めたページを分析すればどのページをよく見ているか、あるいは好みが何なのかが分かる。そこからページ推奨や同じ好みの人を紹介する機能も提供した。まさにFacebookの原型のようなサービスだ。
このサービスは順調に見えたが、ドットコム・バブルの崩壊で一気に縮小。サービスだけでは会社を維持できず、システムの受託開発も請け負うことに。そんなとき、企業向けにブログサービスを立ち上げるコンサルティングの仕事が舞い込む。それをきっかけに企業向けブログ関連ビジネスを開始する。
ブログ分析を始めたのは2005年。知りたいキーワードで検索すると合致したブログ記事は示すが、ブログ記事単体では知りたい情報の断片しか見えず、情報の全体像が見えない。解消するには様々なブログ記事を収集し要約する必要がある。そこからブログ分析へと発展したのだ。
ホットリンクでは「2ちゃんねる」「Yahoo!掲示板」も分析対象とし、後にTwitterやFacebookも加わる。「ブログ分析をきっかけにソーシャル分析を始めて10年が経ちました」と内山氏。
「ソーシャルネットワークは世界の映し鏡です。ソーシャル分析は観測衛星で地球を観察するような技術で、リアルタイムに人々の頭の中が把握できます」(内山氏)
ソーシャルネットワーク上の情報を網羅しリアルタイム分析できるのがホットリンクの特長だ。集められたソーシャル情報を分析すれば、いま世の中で何が流行しているのか、人々はどんなことに関心を持っているのかなどが手に取るように分かる。性別や年代の違い、地域ごとでも、それぞれの人々の関心が分かる。それもリアルタイムにそれらが変化する様子まで把握できるのだ。企業にとって自社の製品やサービスがどのように思われているのか、その実像を把握することができる。さらに、ソーシャル情報はマーケティングだけでなく、国政選挙や株式の自動トレーディング、企業のリスクマネジメントや災害状況の把握など、さまざまな分野で活用され始めている。ソーシャル分析はこれからの時代を知るうえで重要なツールとなっているのだ。

ホットリンクが創業してからの10年、転機もあった。2008年に受託開発を完全にやめて、ソーシャル分析サービスへの一本化を決断したのだ。サービスだけで損益分岐点を超えるのに2年かかり、2010年3月期にやっと黒字化を達成した。
内山氏はそこでほっとしてしまう。そこから今度はワクワクしていない自分に悩む。立ち返ったのが創業当時の「世界中の人々がほっとできる社会基盤を提供する」という思いだ。
そして、社会基盤を提供するならば「上場ぐらいさっさとしておかないと」と考え、2012年2月に上場を決意。2013年12月、1年10カ月という短い期間で東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たす。
上場に向かってソーシャル分析のビジネスは拡大していた。しかし、実際に上場のために動き出すと社内オペレーションには問題も見つかった。経営指標となる数字がすぐに正確に出てこないのだ。解消にはCRM(顧客管理)やSFA(営業支援)の仕組みが必要だった。さらに企業の拡大に伴う「見えない壁」の存在も少しずつでき始めていた。「小さな会社が大企業に勝つには人がすべてです。人の力の最大化には無駄を削ること。それには情報基盤が必要です」と言い、企業が小さいうちにこそ、しっかりとした情報基盤に投資するべきだと内山氏は考えた。内山氏は思い切った企業変革に乗り出す。そこには、そのスピード感に対応できるクラウドサービス「Salesforce」との出会いがあった。
「Salesforce」は内山氏の期待に見事に応え、急成長したホットリンクが抱えていた経営課題を解決した。その詳細は下記のバナーからダウンロードできるホワイトペーパーにまとめられている。これから上場を考えている企業にとって、あるいは企業の中に「見えない壁」を感じている人たちにとって、きっと役立つ情報になっているだろう。