1990年慶大理工卒、94年筑波大学院卒。バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現ブラックロック)で株式運用部長などを歴任し、11年より現職。20年以上にわたり資産運用に従事。
福島 今年でリーマン・ショックから5年、欧州債務問題が認識されてから3年が経ちます。改めてこれらの問題をどのように振り返りますか。
竹治 UBSでは、リーマン・ショックから欧州債務問題に至る世界的な問題は、ひとつの流れの中にあると捉えています。ご存知の通り、リーマン・ショックは米国のサブプライムローン問題(信用力の低い個人向け住宅融資)に端を発しました。サブプライムローンを組み入れた証券化商品は、米国だけでなく欧州やアジアなど世界中に販売されていたため、世界中の金融機関が痛手を負いました。
それを救済すべく各国は税金を使い、まず金融システムを安定化させ、その後、景気回復によって危機を収拾しようとしました。しかし、思うように景気が回復しないばかりか、欧州では危機が国の財政問題へつながりました。そこへユーロという通貨の構造的な問題が重なったわけです。
福島 欧州やユーロの信用問題に発展するなど、事態はより深刻になったようにも思えます。なぜ危機は連鎖したのでしょうか。
竹治 ある意味、時代背景が危機を広げました。21世紀に入り、世界にはIT(情報技術)とグローバル化の波が押し寄せました。マネーが自由に世界を行き来する半面、借金の主体にも境目がなくなりました。そうした背景もあり、危機がより複雑になるばかりか、瞬時に世界中に広がるようになりました。
NHK、TBSなどで報道番組を担当。テレビ東京の経済番組や『サンデー毎日』での連載対談など500人を超える経営者を取材。企業の社外取締役、経営アドバイザーも務める。
福島 グローバル化の負の側面が顕在化したわけですね。とはいえ、現状、米国の景気は上向いていますし、欧州も安定してきたように感じます。危機は鎮静化したのでしょうか。
竹治 確かに現状は鎮静化したようにも見えますが、根本的な問題解決には至っていません。欧州問題の発端ともいえるギリシャやスペインなど南欧諸国は、依然として財政基盤がぜい弱で、景気もよくありません。そういった国々の経済をどう上向かせるかについては、何ら出口が見えません。
ただし、ご指摘の通りグローバルな投資環境は改善しています。米国は住宅市場に明るい兆しが見えます。欧州は、欧州中央銀行(ECB)が国債を無制限に買い取るプログラムを発動するなど、積極的に対応しています。金融市場は将来への期待で動きますから、こうした変化を先取りする格好で現在に至っています。