JR貨物の将来を左右する「線路使用料」の実態 貨物有利なルール、上場なら見直し必要に?

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JR貨物はJR旅客各社に「線路使用料」を支払って貨物列車を運行している(写真:F4UZR / PIXTA)

JR貨物は2017年4月28日に2016年度の決算を発表し、鉄道事業で5億円の営業利益を計上した。同社の鉄道事業が営業利益を上げたのは、事業別に決算を開示するようになった2006年度以降では初めてである。さらにさかのぼると、JR貨物は2005年度に35億円の営業利益を上げており、11年ぶりの出来事だ。

鉄道事業での好調な決算は営業収益の増加と営業費用の減少とで達成された。営業収益は車扱(貸切車扱い)貨物による運送収入や受取保険金の増加によって1369億円と前年度の2015年度と比べて5億円のプラスとなり、営業費用は固定資産除去費などによる修繕費、それから動力費、人件費などの減少によって1364億円と前年度比33億円のマイナスとなり、前年度の33億円の営業損失から営業収支が改善されたからだ。

JR貨物が懸念する「線路使用料」

決算発表に先立ち、JR貨物は3月31日に「JR貨物グループ中期経営計画2021」、そして2017年度の事業計画を公表した。同社は2021年度までの期間内に連結で経常利益100億円以上を達成(2016年度は103億円ですでに到達)し、多少の経済変動などが起きても目標とする経常利益の持続的な確保を目指すという。そして、JR貨物グループによる連結経営の強化に努め、将来の上場申請も可能な体制の整備に取り組んでいくとのことで、JR貨物も上場間近かと一部で報じられた。

そうしたなか、JR貨物自身も認めている懸念材料は「線路使用料」だ。2016年3月31日現在で7968.5kmにも上る同社の営業キロのうち、99.5%を占める7927.7kmは第二種鉄道事業線、つまりJR旅客会社をはじめとする他の鉄道事業者の線路であり、貨物列車の運転に当たっては線路の所有者に使用料を支払わなくてはならない。その線路使用料は、今後上昇が見込まれると同社は考えているのだ。

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