戦後72年「戦後はまだ終わっていない」理由 日本人は勇気をもって「敗者の歴史」を学べ

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中国東北部の方正県にある日本人公墓を慰霊参拝する筆者(写真提供:丹羽連絡事務所)
元伊藤忠商事社長、元中国大使の丹羽宇一郎氏が、太平洋戦争の体験者や軍事・安全保障の専門家に聴いて回り、教科書では学べない戦争の真実をまとめた『丹羽宇一郎 戦争の大問題』を上梓した。
「今回お会いした方たちの中で最も若い方が89歳。戦争体験者は年々いなくなる。戦争の真実を知るには、いまがラストチャンスである」と語る丹羽氏。自身も本当の戦争を知らないという丹羽氏に、この本の取材で体感した「戦争をしない国になるために知るべきこと」について語ってもらった。

レイテ島で突然降り出した大雨

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今日、8月15日は72年前に当時の政府が玉音放送という形で日本国民に敗戦を発表した日である。日本は降服することで戦争を終わらせたのだ。だが、その決断はむしろ遅かったといえる。

前回も述べたことだが、日本は1944年のマリアナ沖海戦によって敗戦が決定的となった。将棋でいえば詰みである。しかし、当時の政府中枢は終戦を決断することなく、1年近くにわたって、なお戦争を継続し、民間人50万人を含む多大な犠牲者を出した。

戦地で命を落とされた英霊は靖国の杜に眠っているといわれる。私は『丹羽宇一郎 戦争の大問題』を出版するにあたって、本年の5月に初めて靖国神社を訪れた。

九段下から大鳥居をくぐり、靖国神社の長く広い参道を進んでいくと拝殿が見えてくる。正面の門から境内に入ると、有名な靖国の桜の木々が目に付く。そのまま進むと、もうひとつ鳥居があって、その先にあるのが拝殿だ。

正面門の脇には能楽堂があり、その先に軍事博物館「遊就館」がある。今回、この「遊就館」にも入ってみた。「遊就館」で最も印象深いのは出口手前にある展示室だ。ここにはおびただしい数の遺影が並んでいる。写真に写った姿を見ると、亡くなった人々、一人ひとりの人生とその家族のことを思わずにはいられない。

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