サバだけで勝負!「鯖や」は何がスゴイのか 預貯金1.5万円から年商約10億円へ復活

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鯖やの松前風とろ鯖棒寿司(会社提供)

1カ月前から予約しないと食べられないお魚のお店があります。それも出てくるお魚は、サバだけ。でもようやく食べられたお客さんは、「脂が乗ってうまかったぁ」「いろいろな調理の仕方で全然飽きないわ」と満足そう。いまや、全国13店舗、シンガポールにも出店して、業容を拡大している「鯖や」さんです。

筆者が最初に大阪府豊中市の本社を取材したのは、もう3年前。最初にごあいさつした方をてっきり社長だと思っていたら、実は弟さんの右田孝哲(たかのり)副社長でした。その後に出てきたのが、お兄さんの右田孝宣(たかのぶ)社長。サバ一筋で急成長してきた業界の風雲児です。見間違えるのも無理はなく、お2人は双生児なのでした。

ユニークな販売戦略を展開

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そのときは、ユニークな販売戦略を主に取材しました。大ぶりの脂の乗った八戸漁港のサバは、口の中で溶けるよう。実に美味しいと思いましたが、右田社長は美味しいだけでは駄目、と言います。「知ってもらわなければいけません。知って食べてもらうのです。1度口に入れてもらえば、美味しさをわかってもらえる自信があります」。

そこで、サバずしを宅配するバイク「サバイク」で街中を走ってPR。友人と一緒にテーマソング「サバばばーん」を制作してお店で流しました。「♪サバサバサバサバサバ、ばばーん」と元気な曲で、購買意欲をそそります。また、3月8日のサバの日を記念し、3時8分開始のサバ検定38問を実施。お客たちは38分間難問に挑戦しました。結果は8割が合格、サバ博士の右田社長からめでたく認定証を授与されました。それにしても、38(サバ)へのこだわりが半端でないなぁ、と感心します。

移動販売車「サバス」(会社提供)

さらに、改装費500万円で移動販売車「サバス」を製作。車内に調理スペースを設け、イベント会場での直販が可能です。このほか、小学生を対象に食育活動に地道に取り組む一方、お客様を大切に、との思いから大量のアンケートを集める会社でもあります。「節分に恵方巻を食べる習慣がありますが、3月8日にサバずしを食べてもらうことももくろんでいます」と右田社長。まさに、サバ一筋の熱い思いが伝わってきました。

スタート時(2007年)はサバずし1本500円で月間500本の売り上げでしたが、2014年には単価が4倍の平均2000円になり、20倍の1万本以上を売り上げました。でも、すんなりとここまで来たわけではありません。30代前半まで、右田社長の半生にはさまざまな紆余曲折がありました。

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