発覚!おぞましい「ブラック保育園」の実態 「保育園不足」に悩む自治体も事実もみ消し?
神奈川県にある認可保育園の園長だったみつこさん(仮名)は2016年、同保育園の運営会社を訴えた。みつこさんは2015年春にA社から採用され、園長として園の立ち上げから勤務していた。そのわずか1年後の提訴。いったい、何があったのか。
現在60代のみつこさんは、保育経歴15年以上のベテランだ。民間の認可保育園長や児童発達支援施設の管理者を務めた経験がある。さらに、公立の障がい者施設、老人介護施設でも働き、福祉に関わり40年の人生である。
みつこさんは小規模保育園が対象とする0~2歳児の子どもたちについて話す。「この年頃の子にはスキンシップが一番です。叱ることなんてありませんよ」「あふれるほど愛情を注げば、あふれた分、大人になったとき、その子は人に愛情を注げる人になる。それが私の保育理念です」。
保育園の園長になってから約半年後に適応障害
こうして半世紀弱のあいだ社会福祉に人生をささげてきたみつこさんだが、園長として働き出してから約半年後の2015年10月に適応障害の診断を受けた。原因の1つは、A社での園長業務の中で毎月80~90時間にもおよぶ残業を続けたことにある。月80時間以上の残業は「過労死ライン」と呼ばれる。この状況で過労死が起これば、因果関係を認められる基準だ。
そもそも、みつこさんの園には必要な保育士の人数がそろっていなかった。驚くべきことに、A社は他県の系列園で働く保育士を、みつこさんの園の職員に仕立てあげて自治体に届け出ていた。こうすることで、実際にはそこで働いていない人の人件費が、A社に補助金として入る。
ただ、実際に職員は配置されていないために、現場では慢性的な人手不足が続いた。みつこさんは、園長としてどうにか現場を回すために一日中働いた。早番と遅番の保育業務を担当しながら、昼の時間帯に園長業務をこなす。残業だけでは間に合わず、持ち帰った仕事もある。
みつこさんに、さらなる苦難が襲いかかる。きっかけは、就職後まもない2015年4月末ごろ、みつこさんのもとに、市内にある系列の大規模園の職員から「園児への虐待が疑われる職員がいる」という相談が寄せられたことだった。
さらに、5月のはじめには、地元住民からみつこさんの園への通報があった。