甲子園で「応援に回る」球児が五輪で輝く未来 野球部から「タレント発掘」身体能力に期待大

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昨年の高校野球「夏の甲子園」決勝は作新学院(栃木)が北海(南北海道)を下して優勝し、称賛を浴びた。しかし、その一方では甲子園どころか、試合に出られずに3年間を終える野球部員も多くいる(写真:岡沢克郎/アフロ)

甲子園のアルプススタンドでメガホンをたたき、声をからして応援するユニフォーム姿の高校球児。もうすぐ開幕する春の風物詩「センバツ高校野球」で、今年も彼らの姿を見ることができるだろう。

なぜ、甲子園のスタンドで応援する高校球児があれほど多いのか。甲子園に出場するような強豪校ともなれば、野球部の部員が100人を超える多さであることもザラだからだ。そして、部員の大半は、甲子園のグラウンドに立つどころか補欠としてベンチ入りすることもなく、スタンドから応援し続けて3年間の部活動を終える。

しかし、よく見ていただければ気づくと思う。スタンドで応援する彼らの中に、頭一つ抜けた体格を誇り、いかにも身体能力に優れていそうな球児も交じっていることに。もし彼らが別の競技を選んでいたらどうだろうか。

そこに目をつけたのが、スポーツ庁だ。1988年のソウル五輪・競泳の金メダリストである鈴木大地氏が、同庁の発足した2015年10月から初代長官を務めている。その鈴木長官が就任1年となる昨年10月に、日本の競技力強化に向けた支援方針として打ち出したのが、通称「鈴木プラン」である。

甲子園には行けなかったけれど、五輪に行こう

正式名称は「競技力強化のための今後の支援方針」。合計41個と過去最多のメダルを獲得した一方で、メダルを獲得した競技数は減少したリオ五輪の成果と課題を踏まえて練り上げられた。トレーニングセンターの拡充・整備など、2020年東京五輪のメダル獲得数を押し上げるための支援体制をつくり、2020年以降もそれが持続可能な形で受け継がれることを目指している。そして、プランの中でも目玉となる取り組みとして、メディアに大きく取り上げられたのが、高校球児などからの「タレント発掘」である。

鈴木長官によると、約17万人いる高校球児のうち、1チームあたり12人が試合に出られる前提で考えると実際に試合のグラウンドに立つのはわずか5万人。残りの7割、12万人もの野球部員は1度も試合に出ないまま、引退していくという。

そこで、インターハイや高校野球でベンチやスタンドでの応援に回った選手、卒業後に引退を考えている選手らを対象に、別の競技での可能性を探る機会を設けて未知のタレントを発掘する取り組みを進めていく。プランを公表した昨年10月の会見で、鈴木長官は「ここに、『タレントの宝』が眠っているのではないか。甲子園には行けなかったかもしれないけど、オリンピックに行かない? と、どんどん声をかける」と意気込みを語った。

そうは言っても、そんなにうまくいくものだろうか、と疑問をもつ人も多いだろう。

しかし、実際に「うまくいった」例はすでに出ていて、世界的に見るとこの取り組みは、それほど目新しいものではないのである。

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