現代の「おカネの流れ」を歪める意外な黒幕 タックスヘイブンと大英帝国の深い関係

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タックスヘイブンは大英帝国が作った。その影響は、いまでも厳然と…(写真:amaguma / PIXTA)
「パナマ文書」「イギリスのEU離脱」「アメリカ大統領選」……昨年は世界の“現代史”に書き加えられるような大きな出来事が立て続けに起きた。しかし、どんな事情からそのような事件に発展したのか、はっきりとは説明できない人が多いのではないだろうか? そんな現代の出来事も、実は「お金の流れ」に注目すると、驚くほどわかりやすくなる場合がある。
この記事では、『お金の流れで探る現代権力史』を上梓した元国税調査官の大村大次郎氏が、現代における“お金の流れ”を歪める「タックスヘイブン」に独自の視点から迫る。

 

2016年初頭、「パナマ文書」が世界中を騒がせたのをご記憶の方も多いだろう。

租税回避にかかわる企業設立業務などを行っていたパナマの法律事務所のデータが、何者かによってドイツの南ドイツ新聞に持ち込まれ、それが世界中に流出したのである。

このデータには、過去40年、21万件のタックスヘイブンにおける取引データが記録されていた。この中には、ロシアのプーチン大統領やイギリスのキャメロン元首相の関係者、アルゼンチンのサッカー選手メッシ、香港の俳優ジャッキー・チェンをはじめ、世界各国の政治家、経済人、スポーツ選手などの著名人が含まれていた。

パナマ文書以前にも、「ルクセンブルクリークス」など、タックスヘイブンに関する内部告発は幾度か行われており、「タックスヘイブンの闇」は世界中が危惧するところとなっている。

「犯罪マネーの隠し場所」としての租税回避地

タックスヘイブンとは、「租税回避地」、つまり税金のかからない地域のことである。タックスヘイブンに住居地を置けば、個人の税金はほとんどかからない。

また、各国を股にかけている多国籍企業が本拠地をここに置いておけば、法人税の節税もできる。タックスヘイブンに本社を置いて、各国には子会社を置く。そして、各国での利益がタックスヘイブンにある本社に集中するようにしておくのだ。そうすればその企業グループ全体では、税金を非常に安くすることができる。だから、多国籍企業のなかには、本社をタックスヘイブンに置いていることも多い。

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