「情熱大陸」が描く“ヒトの素顔”の裏側 情熱大陸プロデューサー福岡元啓氏に聞く

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 日曜夜の人気テレビ番組と言えば、TBS系列の人間密着ドキュメンタリー「情熱大陸」(23:00~23:30)だ。あらゆるジャンルの第一線で活躍する「今、見るべき」「今、見てほしい」人物を取り上げ、30分間にわたり、その人の魅力・素顔に迫っていく番組。普段目にすることができない日常を見ることができ、葉加瀬太郎氏が作曲したテーマ曲と、窪田等氏のナレーションが流れる最後のシーンは、番組の象徴にもなっている。
 今年放送された人物を見ても、ビジュアル系エアバンド・ゴールデンボンバーの鬼龍院翔氏、女子スキー・ジャンプチームコーチの山田いずみ氏、音楽家の星野源氏、寿司職人の工藤順也氏、三陸鉄道と、誰もが知っている有名人から、知る人ぞ知る人物まで幅広くスポットライトを当てている。
 「情熱大陸」は1998年4月の放送開始から16年目に入り、今年5月に放送回数800回を迎える。『情熱の伝え方』を記した、福岡元啓氏に「人の切り取り方」について聞いた。

本人の知らない“本人”を描けるか

――「情熱大陸」の醍醐味は、いい意味で“その人の素”が出るところだと思います。たとえば、AKB48の前田敦子さんがカメラを嫌がるシーンを流したり、小説家の林真理子さんがうたた寝する素の顔となった瞬間を放送したり。“その人自身”を描いている気がします。

情熱大陸では、本人から「オレ、あんなんだったかな」「あのシーンは流してほしくなかった」という悶々とした感想を、放送直後にもらうことがあります。だけど、しばらくしてから、周りからのいい評判を聞くと、「あれも自分だったんだ」に変わるのです。それは、「本人が気がつかない自分」というのが、映像に出ているからだと思います。情熱大陸では、そうした自分の知らない自分が出てしまうような「人間味」にこだわっています。前田敦子さんだって嫌だったと思います。カメラを嫌がっている姿を映されるのは。だけど、当時の彼女の多忙さを描くには、あのシーンがよかったと思うのです。

また、今年の放送一発目はゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんだったのですが、「今年残れるんですか」「紅白歌合戦も2年連続で同じ曲ですが、いいんですか」という本人がよく思わないであろうことも、あえて聞きました。これは僕のほうから聞いてくるように取材しているディレクターにお願いしたのです。それを聞かないと、ファン以外の多くの人は冷めるから。ただ、鬼龍院さんがすごいなと思うのは、その質問に対してきちんと答えました。そして、番組の最後に今年の抱負を書くシーンがあるのですが、彼は「目の前のことを精一杯頑張る」と書いたのです。

テレビの世界では自分たちはどうなっているかわからないけど、自分たちのことをしっかりやっていきますと。その姿を見て「あ、鬼龍院さんはただのキワモノではないんだな。イロものエアバンドじゃないな」と僕自身も思えましたし、番組を見ていた人も思った瞬間だったのではないか――と。ただ、「すごい」「すばらしい」と持ち上げるのではなく、ここまでしないとダメだと思うんですね。

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