高学歴女子が年収212万でもNPOで働く理由

「どうせならやりたいことをやって死にたい」

NPOへの転職前、500万から1000万円程度の年収を稼ぎ出していたN女たち。彼女たちが、有給職員の年収の平均値が212万円とされるNPO業界へ転職することは驚きではあるが、とはいえ、取材をしたN女たちの約半数は、NPOへの転職後もサラリーマンの平均年収程度の収入を稼いでいることもわかってきた。ソーシャルセクターは、かつてのような「無償奉仕」や「自己犠牲」によって成り立つものではなく、「経営意識」を持ったプロたちが参入する職場へと変わりつつあるのである。

「やりがいがあっても低賃金でいいとは思っていない」

N女たちは言う。「やりがいのある仕事だからと言って、低賃金でもいいとは思わない」

彼女たちがソーシャルセクターを職場に選んだ理由は、それぞれ違うし、いくつかの条件が重なって決断したケースが多いので、一般化はできない。ただ、N女たちから何度か繰り返された言葉からは、ある種の傾向のようなものを見いだせると思う。 

例えば、NPO法人「ビッグイシュー基金」の瀬名波雅子さんの転職の決め手は「何のために働いているのか?」という問いだったという。5年4カ月勤めた大手カード会社は、器の大きい良い会社で、ブレイクダウンされた目の前の仕事は楽しかったと振り返る。しかし、もっとその先にあるもの、仕事の目的や意義について考えると、カード会社が目的とする”大量消費を促す”というビジネスには馴染めなかった。そして2011年3月11日、東日本大震災で激しく揺れたビルの中で、死ぬかもしれないと思った彼女は決断した。「明日死ぬかもしれないなら、やりたいことをやって死にたい」。彼女がやりたかったこととは、貧困問題をビジネスによって解決していく道だった。

N女たちにとって、仕事を通じて何をするか、という点はもちろん重要だが、同時に、女性であるがゆえ「どう働くか」も重要だ。病児保育に取り組むNPO法人「ノーベル」の吉田綾さんは、育休を経て一旦はリクルートに復帰したものの、育児との両立が困難だったことからNPOに転職した。チャレンジしたい人を男女の分け隔てなくあと押しするリクルートの姿勢は、ある種理想的な男女平等主義のようにも見えるが、独身者や家事育児を一切やらない既婚男性の生活サイクルを基準とする労働環境は、子育て中だった彼女には過酷だった。そこで吉田さんは、「子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会」をビジョンに描くNPOに転職し、週3日の事務所勤務と週2日の在宅勤務という、新しい働き方を手に入れた。決め手はズバリ、子育てに理解があることへの安心感。給料は減ったものの、心は豊かに安定して過ごせていると思う、と話してくれた。

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