渋谷駅は、なぜあんなに複雑になったのか 良くも悪くも「歴史の積み重ね」

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渋谷駅周辺は再開発の真っ只中だ〈筆者撮影)

JR渋谷駅中央改札口を出て、地下にある東横線のホームへ向かう途中「ここには63年間、東横線渋谷駅の改札口がありました」と書かれた看板が通路の壁に掲示されていた。

2013年3月16日、東急東横線の渋谷駅が地上2階の高架駅から地下5階へと移動し、東京メトロ副都心線との相互乗り入れを開始した。東横線渋谷駅の名物だった「カマボコ屋根」の下で、大勢の人々が別れを惜しんだ出来事は、まだ記憶に新しい。

現在、渋谷駅の東側は大規模工事の真っただなか。幾本もの大型クレーンが空を向いて立ち、掘り下げられた地面の上で重機が動いている。

2012年4月、渋谷駅東方の東急文化会館跡にオープンした「渋谷ヒカリエ」を皮切りに、渋谷駅周辺の再開発はすでに始まっている。

複数の鉄道、交通事業者が集まる渋谷駅は、長い間それぞれが増築や改築を続けてきた。その結果、複雑怪奇な構造になり、乗換の動線が不明瞭でバリアフリー化にも支障があった。これを解消する目的で渋谷駅の抜本的な改築とあわせ、駅周辺の再開発に着手することになった。

渋谷駅周辺地区における都市再開発計画は「渋谷駅街区」「渋谷駅南街区」「道玄坂一丁目駅前地区」「渋谷駅桜丘口地区」「渋谷宮下町計画」と大きく5つの地区・街区に分けられ、今まさに進行中だ。

品川線の駅として誕生

渋谷駅が開業したのは1885(明治18)年3月1日。品川から池袋、板橋を経て赤羽へ至る「品川線」の駅として設置された。品川線は民営の日本鉄道が建設。当時、日本の主要な輸出品だった生糸や絹織物を、北関東から横浜の港へ運ぶのが目的だった。

開業当時の渋谷駅は現在の場所から品川方へ約300メートル離れた「中渋谷村字並木前」にあった。これは今の埼京線ホームがある付近である。

品川線は、大崎から目黒川沿いに沿って敷設される計画があったといわれる。『新修渋谷区史』(1966年編さん)によれば、下目黒で住民の反対運動に遭い、大掘割工事をして五反田から目黒、恵比寿を経る今のルートに変更されたと記されている。

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