【中国経済動向】世銀、09年の成長予測を1ポイント引き下げ、追加刺激策の必要性には否定的

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中国政府は、今回の全人代であらためて4兆元計画の内訳を明らかにした。その内容は、昨年11月27日に公開された計画とは変更されていた。たとえば1兆8000億元が計画されていた鉄道、道路、空港などの交通インフラや送電網への投資は1兆5000億元に減額。一方で低所得者向け住宅の建設は2800億元から4000億元に、医療衛生、文化教育が400億元から1500億元に増額した。民生分野への支出を拡大し、セーフティネット構築によって消費を促進する一方で、インフラへの投資はのりしろとしてとっておく姿勢がうかがえる。

大規模な公共投資を予定していることから、09年の中国の財政赤字は9500億元にのぼる見込みだ。だが、08年のGDP約30兆元との対比では3%強にとどまることから、中国政府は「財政赤字はコントロール可能な範囲」(温首相)としている。中国政府は8%成長を政治目標とし、政策を総動員してこれを達成する姿勢だが、結果的に過剰投資体質をさらに強め、ひいては財政悪化を招く可能性もある。

今回の「四半期報告」は失業対策や医療改革などセーフティネットの構築に多くの紙幅を割いており、4兆元計画の内容見直しを歓迎する姿勢が鮮明だ。一方で「世界全体がマイナス成長の環境下で6.5%成長するだけでも、たいしたもの。いま財政出動の必要はない」(ダラー氏)、「成長率が多少鈍化しても、経済や社会的安定が脅かされることはないだろう」(カウス氏)とのコメントもあった。中国政府が8%成長に固執することで、かえって経済の構造改革が遅れることへの懸念をもっているようだ。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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