大暴落から米国の個人投資家が学んだものとは --リッパー最高執行責任者(COO) エリック・アルムクィスト

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 リスクリターンの考え方、リスクをどのようにとらえるべきかについても、さまざまな見方があります。リスクをとらえる基準となる"モノサシ"を提供していることがリッパーの強みです。具体的には「収益一貫性」であるとか、「元本保全性」といった評価基準がこれにあたります。今後の課題としては、実際に投資を行っている方々に対して、こういったモノサシ、ツールをどのように提供していくかということだと考えています。

--米国におけるリッパーのビジネスとは、具体的にはどのようなものですか。

米国の市場においては、個人の投資家は無料でウエブサイトを利用して、情報検索を行うことができるようになっています。われわれは投信運用会社を主な顧客として、彼らに我々のプロダクトやサービスを販売しています。そして、運用会社がリッパーの提供する情報を活用して投資家向けの教育資料を作ったり、あるいはマーケティング資料に情報を織り込んだりしているわけです。つまり、リッパーはディストリビューターやアドバイザーに情報を提供している会社ということになります。また、昨年トムソンとロイターが合併してからは、富裕層をターゲットとしたサービスという部分で、リッパーとしての情報提供も拡充させていく予定です。

--日本におけるこれまでの足取りは。また事業展開を行ううえでの米国との事業環境の違いとは?

日本では8年前に事業を立ち上げました。また、毎年リッパー独自の定量分析手法によって優れたファンドを認定し、これを表彰するという「ファンドアワード」も同じく日本で8年の歴史を持っています。日本においても顧客の多くは投信運用会社です。現在われわれは顧客に対し、仲介だけではなく、もっと投資家教育にも力を注ごうと呼びかけています。投資家を教育することが業界としての責務であると考えているのです。今後はさらに個人投資家に対して、たとえばリッパーの投信評価システム「リッパー・リーダーズ」のウエブサイト、また富裕層向けの商品などについて呼びかけを強化していきたいと思っています。日本は世界第2の市場なのですから、もっと投資信託が使われるべきでしょう。そのためにはわれわれのような会社がそれをプロモートしていく必要があると考えています。

日米の事業環境の違いは規制緩和のタイミングにあります。日本では投信に関する規制緩和が若干遅れていました。私がこの業界に入ったのは約30年前のことです。当時の米国ではマネーマケットは大きな市場を持っていましたが、株式を組み入れるミューチュアルファンドに投資する人はほとんどいませんでした。米国においても一般投資家が株式のミューチュアルファンドに投資できるようになるまでには、長い時間がかかったものです。ですから、メディアやコミュニケーションがより発達している現在であっても、やはり日本の個人投資家が株を組み入れる投信に投資するようになるのは、一定の時間が必要となるのではないでしょうか。

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