【産業天気図・商社】予想より早く雨雲は到来。09年度は完全に雨からスタート。資源反転による後半回復も望み薄

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予想天気
  09年4月~9月   09年10月~10年3月

「絶好調」が枕詞だった総合商社も、2008年度後半から業績は急速に悪化している。それも想定よりも早いスピードで落ち込んでいる。09年度は前半から「雨」、後半も現時点では「雨」の確率が高い。

これまで08年度は総合商社はほとんど不況の波から逃げ切れると思われてきた。原油は1~12月決算が中心で年間平均価格は高水準でとどまること、鉄鉱石と原料炭の価格が年度契約で08年度は高値が維持されるためだ。しかし、想定よりも早いペースで業績は減速している。

08年度第3四半期(08年4~12月期)に落ち込みが特に目立ったのは三井物産<8031>と伊藤忠商事<8001>。三井物産は鉄鉱石の販売数量減少や豪州スクラップ会社株の評価損などがかさんだほか、国内の上場企業株式の評価損も拡大した。三井物産は株式簿価に対し期末(四半期も)の株価が3割減で評価損を計上するという他社より厳しい基準を採用していることも一足早く業績が悪くなった要因にある。伊藤忠商事はモンゴルの不正取引の貸倒引当金やメキシコ湾での油ガス田開発中止に伴う損失を計上したことが大きい。

しかし、資源、非資源ともに日に日に業況が悪化していることは他社も変わらない。住友商事<8053>以外、三井物産、伊藤忠商事、三菱商事<8058>、丸紅<8002>は第3四半期発表時に08年度の業績予想を修正した。実際は、住友商事も株式評価損の拡大などで予想未達に終わる可能性が高い。ただ、大幅赤字になった自動車メーカーや電機メーカーに比べて、総合商社の08年度の純益水準は十分に高いと見ることができる。

しかし、総合商社も09年度はスタート時から厳しい状況に直面することになる。
 
 資源価格は08年度より大幅に下落している。原油価格は一時期の1バレル30ドル台から足元は40ドル後半まで戻しているが、前述のように1~12月期である以上、前半の回復はほとんど見込めない。鉄鉱石と原料炭は価格交渉が決着していないが、大きく値上がりした08年度から一転、07年度水準程度まで戻すと見られている。07年度と価格が同じであった場合でも、鉄鋼メーカーの減産により数量減、豪ドル安(一時より戻しているが)による目減りもあるため、08年度価格で売れる契約分残(積み残し分)というプラス要因はあっても、鉄鋼原料の利益では07年度よりも落ちるだろう。

非資源では、製造業から小売りまでほとんどすべての産業が厳しい中で、総合商社のビジネスも利益は減少せざるをえない。インフラ関連や食料など比較的安定した事業も持つのは幅広い事業ポートフォリオを持つ総合商社の強みだが、こうした安定事業でほか事業の落ち込みをカバーすることは不可能だ。

結果、09年度は少なくとも前半はかなり厳しい決算となるだろう。後半もあまり期待は持てないが、OPECの減産などで原油価格が上昇すれば減益幅が縮小する可能性はある。ただし、年度価格の鉄鋼原料は期中の価格上昇は期待できない。世界不況の中で原油高が進んだ場合に非資源事業の苦境が強まることも考えられる。結局、09年度の後半もV字回復は期待薄だろう。

(山田 雄大)

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