世界のゴミ問題は「福岡方式」が解決している 120カ国に技術指導、愛され"ゴミ先生"の正体

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まつふじ・やすし●福岡大学工学部 社会デザイン工学科 教授。福岡県出身。福岡大学薬学部卒業、工学博士。専門分野は衛生工学、廃棄物工学、環境微生物。大学で教鞭を執る傍ら、国連ハビタットやJICA、国連開発計画等のアドバイザーを務め、海外に「福岡方式」を普及。福岡方式は2011年にCDM(クリーン開発メカニズム)の新技術として国連の認定を受けた。2013年には環境大臣表彰も受章。

――それで日本中へ広がったと。

松藤:日本中の自治体がゴミ問題を抱えていたので、福岡方式は注目を浴び、各地で採用されました。1979年に制定された旧・厚生省の最終処分場指針では日本の標準構造として採用されて、今では日本全国およそ200箇所、85%のゴミ埋立地で福岡方式が使われています。

海辺には適しませんが、内陸は福岡方式にするというガイドラインがあるので。同時に、福岡方式は研究を続けることでまだまだ進化しています。

――海外へ技術移転したきっかけは?

松藤:1988年、日本のODA(政府開発援助)の一環で、JICAの衛生埋立の専門家としてマレーシアに派遣されたのが最初でした。現地のゴミ処理場には20年前の福岡と同じような光景が広がり、僕自身、当時にタイムスリップしたような感覚で。現場の人にいろいろ教えてもらい、現地で入手できる物で福岡方式の埋立地を作った。それが驚くほどうまくいったんです。

その後もJICAや国連ハビタット、福岡市、福岡大学などから協力要請があり、これまでイラン、中国、イタリア、ドミニカ共和国、ベトナム、ブータン、サモアなど13カ国で埋立場改善を行いました。一方で、福岡に120カ国以上の研修生を受け入れて、技術指導などを行っています。

現地人もビックリ!手でゴミをガツとつかみ…

――2015年には、アフリカで初となるケニアのプロジェクトも始まりました。星野さん、そもそも国連ハビタットはどんな機関なのでしょう?

星野:世界各地で急速な都市化が進行するのに伴い、発展途上国の都市に暮らす人々の居住問題は深刻化しています。1978年に設立された国連ハビタットは、そんな都市化や居住に関する様々な問題に取り組み、都市計画や政策提言の一方、住民主体のまちづくりを推進しています。

ゴミ問題も主要なテーマのひとつで、福岡本部が開設した1997年から、松藤先生には大変お世話になっています。

――ケニアに福岡方式を導入した理由は?

星野:ケニアは急激に都市化するにつれ、ゴミの増加とゴミ捨て場から発生するガスや汚水による悪影響が表面化しており、特に中小規模の都市におけるゴミ処分場の建設とシステムの確立が急務でした。そこで松藤先生に廃棄物コンサルタントに就任いただき、2015年3月下旬から7カ月かけて、まずは約1万平方メートルのモデル処分場を建設したのです。

松藤先生は世界のどこに行っても誰よりも早く一団の先頭を歩き、ご自分の歩幅で距離を測り、ゴミを手でガッとつかみ臭いをかいで、BOD(水の汚れを示す指標)やpH(酸性・アルカリ性への傾き度合い)をほぼ正確に当てられる。これには現地政府の人もスカベンジャーもビックリですよ。本当にパワフルでプロフェッショナルな先生です。

それに、どこの地域でも地元の人の手で処分場を造り、維持管理できるようにするというのが松藤先生のモットーなんです。

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