深刻な外資系銀行の危機に万全な準備を急げ、破綻、撤退への対応策

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資産はどこが引き継ぐのか

経営悪化が進展すると、いずれ、資金繰りの悪化と資産圧縮の困難さから自主的に日本撤退を決定する銀行が出現してもおかしくない。すでに、一部の欧州系銀行は具体的に検討しているという話も漏れ伝わってきている。

そんな銀行は一挙に資産売却に動くが、誰が資産を引き取れるのか。

邦銀は自己資本比率規制の制約を受けて、自らの顧客に与信するので精一杯という状況にある。比較的良質な資産だったとしても、それらを譲り受ける余裕はほとんどないに違いない。引き取り手が現れなければ、撤退を急ぐ外資系銀行は一挙に回収行動を積極化せざるをえまい。その対象となる企業は資金繰り悪化に見舞われる。倒産の危機すらあるだろう。

やや質的に劣る資産であれば言うに及ばない。新自己資本比率規制(バーゼル�)の下ではリスクウエートがハネ上がって、銀行では資産膨張に勢いがついてしまいかねない。もちろん、信用リスクの問題も付きまとう。買えない資産だ。

あくまでも一般論の域を出ないが、外資系銀行には限界金融的な側面をぬぐえない。資金需要の拡大局面で限界的な増加需要を吸収し、与信するのが限界金融だ。この間の情勢で言うと、不動産関連などの貸出資産、証券化資産の比率が高い可能性は大いにある。「買うのはサービサーか」と某銀行幹部が他人事のように予想するほど銀行は手を出しにくい。

しかし、それでは継続融資の道は絶たれ、債務を買われた企業は資金繰り破綻の憂き目を見る可能性が大きい。

これからも欧米系銀行の経営がさらに悪化する見通しが強い中で、金融分野では官民挙げた危機対策を準備しておく必要がある。

(浪川 攻 =週刊東洋経済)

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