『なにを食べたらいいの?』の著者、安部司氏・食品ジャーナリストに聞く

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---具体的なメニューとしては。

たとえばみそ汁と、麦飯みたいなご飯と魚の開きではどうか。自分でみそをつくれとは言わない。ちょっと値段のはるみそを買ってくればいい。洋食や中華を否定しているわけではない。頻度は別として和食を増やす。毎日栄養価を考えてなどといったことはしょせん無理だ。昔から食べられてきたものを食べることにするというスタンスでいい。そうしたら、体調もよくなるし、お通じもよくなる。肌はつやつやになるし、風邪も引かなくなる。これは私自身が立証している。

--語呂合わせで食品の摂り方を説明しています。

語呂合わせが私は好きだが、お母さん方も大好きだ。私自身は「しょうわそうす」(小食・和食・粗食・薄味)を心掛けている。

そして、「ひふみの原則」というのもある。「ひ」=「非伝統的なもの」は食べない、「ふ」=「不自然なもの」、つまりすごくきれいなもの、非常に安いものは食べない、「み」=「未経験なもの」は食べない、という原則でこれも私は守っている。

--スーパーでの買い物が難しくなりますね。

素材型、つまり原形に近いものを買うことだ。たとえば1000円札3枚で野菜と魚を買うとする。原形に近いものならカゴいっぱいになる。ところが冷凍食品や調理済み食品を買ってごらん、ちょこんとしかならない。すぐ食べられるだけに、手間賃を払う。素材型はすぐ食べられないが、半値以下となる。

もう一つ問題にしたいのは、なぜ野菜・果物の品質に色と形が入るのかということ。「等外品」が除外される。その分、単価は高いが廃棄も多い。それに高コスト。これをつくるために、農業資材、ビニールハウス、肥料、農薬、スプリンクラー、ボイラーが必要になる。そもそも品質とは、栄養価であり生産履歴であり、それから糖度ぐらいのもの。食べ物の価値は形ばかりでも色ばかりでもない。生産者も、形が悪いほど色が悪いほど安全だと言うぐらいにアピールしてほしい。

「手間をとりますか、化学物質をとりますか」。手間をかければ、その後ろ姿を子どもたちが見ている。余分な化学物質をとらないだけではなく、家庭で共通の話題がはずむ。「個食」でばらばらというのでなく、食卓も楽しくなる。

(聞き手・:塚田紀史 撮影:風間仁一郎=週刊東洋経済))

あべ・つかさ
1951年福岡県生まれ。山口大学文理学部化学科卒業後、食品総合商社勤務。退職後は、海外での食品の開発輸入や、無添加食品等の開発、伝統食品の復活に取り組む。NPO熊本県有機農業研究会JAS判定員、経産省水質第一種公害防止管理者。


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