セ・リーグ優勝決定戦で空席が多かったワケ 転売目的で購入するチケットゲッターの生態

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Aクラスの常連球団は、クライマックスシリーズや日本シリーズに進出する可能性が高い。このため、ファンクラブに複数口数申し込み、年会費を負担してでも入会する。「ファンクラブグッズを複数種類の中から選択する形を取っていると、全種類欲しいからと複数口申し込んでくるから断れない。不審な買い方をしている人には警告もするが、恒常的に転売している証拠はつかみようがないし手口も巧妙」という。

しかも、ファンクラブの入会は通常シーズン終了まで受け付けるから、ペナントレースの行方がある程度わかってから入会することも可能だ。まして10月2日のヤクルト・阪神戦のように、ファンクラブ優先枠もない人気カードは、チケットゲッターの格好のターゲットになってしまうのだろう。最後まで客席が埋まらなかったということは、チケットゲッターは大量の売れ残りを抱えたのだろうが、それで買えなかったファンが納得できるはずもない。

「目的」「場所」「行為」の3要件

そもそも、オークションサイトでチケットを転売することは違法ではないのだろうか。

ダフ屋にチケットを売る、ダフ屋からチケットを買うことが違法行為であることは、たいていの人が知っている。基本的に都道府県の迷惑防止条例で禁止されており、東京都では1962年に迷惑防止条例が誕生したときからダフ屋行為の禁止条項が盛り込まれている。転売目的の購入者によって、本当に観戦したい人たちの利益が、チケットを正規料金で購入できなくなるという形で侵害される。だから迷惑防止条例なのであり、6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金という、刑事罰の規定もある。

「迷惑防止条例がない地域もあり、物価統制令で規制している例もあるが、いずれにしても全国どこでもダフ屋行為は何らかの形で禁止されている」(スポーツやチケットの法律問題に詳しい多田猛弁護士)

多田弁護士によれば、ダフ屋行為とは、買う場合は①不特定の者に転売する目的、もしくは不特定の者に転売する目的を持った者に交付する目的で(目的要件)、②公共の場所もしくは公共の乗り物で(場所要件)、③うろついたり人につきまとうなどして買う(行為要件)行為。売る場合は①の目的要件が転売する目的で得たもの、②の場所要件は同じく公共の場所もしくは公共の乗り物で、③の行為要件は不特定の者に、うろついたり人につきまとうなどして売る行為、ということになる。

つまり、目的要件、場所要件、行為要件がすべてそろって初めてダフ屋行為となる。オークションサイトを見ると、「急に行けなくなったので」というコメントが必ず付いているのは、事実である場合と、目的要件を意識した場合が混在しているからだろう。

だが、大量かつ反復継続的に出品していれば、「転売目的ではなかった」と強弁しても通用しない。逮捕事例は少なからずある。最も問題になるのは場所要件だ。

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