セ・リーグ優勝決定戦で空席が多かったワケ 転売目的で購入するチケットゲッターの生態

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球団から完売宣言が出ていることに気づいたのは、午前10時すぎ。スワチケがアクセス不能のまま完売宣言が出たことについて、前出の某球団OBは、「プレイガイドやコンビニへの配給枚数が多く、球団が自社販売用に手元に残していた枚数が極端に少なかった可能性がある」と見る。

プレイガイドやコンビニで買えるプロ野球のチケットは、球団がプレイガイドやコンビニに販売を委託したチケットであり、その枚数は球団自身のチケット販売力に反比例する。球団チケットサイトの運営まで外部のプレイガイドに外注し、システム手数料を支払っている球団もあるという。

当然、プレイガイドへの依存度合いで、球団とプレイガイドの力関係も決まる。チケットの配給権は球団側にあり、本来は販売手数料が発生する委託販売の枚数は少ないほうが良いに決まっている。だが、完売確実な時だけ自前で売ります、とは言えないだろうし、それだけの枚数をさばけるシステムを自前で持っていないということもある。

狙われるファンクラブ優先枠

それにしても、完売にもかかわらず3塁側の外野の一角がぽっかりと空いたままになったのはなぜなのか。来られなくなった人が2000人以上もいるわけがない。犯人はおそらく「チケットゲッター」たちだろう。チケットゲッターとは、転売目的でコンサートやスポーツ興業のチケットを購入し、オークションサイトで売却することで利益を得ている人たちのこと。筆者も日本シリーズのチケットはすべて抽選に外れたため、神宮開催の第3戦と第5戦のチケットをやむなくオークションサイトで購入した。

神宮開催の第5戦は、ソフトバンクが4連勝すればゲーム開催自体がなくなる。当初は正規料金通りの出品もあり、筆者も正規料金と同額で購入できた。だが、確実に開催される第3戦は当初から最低でも正規料金の倍。第3戦でヤクルトが勝利し、第5戦の開催が決まったとたん、第5戦の出品価格もハネ上がった。

暴力団対策法施行後の各球団の徹底的な排除策が奏功し、かつて球場周辺に大量に出没していたダフ屋は今や絶滅危惧種となった。「チケットゲッターの多くはかつてのダフ屋たちではなく素人」(チケットショップ経営者)である。コンサートやスポーツ興業のチケットを購入しながら、たまたま用事が出来て行けなくなり、オークションサイトで売ってみたら高値で売れて味をしめたことがきっかけになるらしい。

前出の某球団OBによれば、「ファンクラブ優先枠を使ってチケットを購入するために、わざわざファンクラブに入会するゲッターは少なくない」。プロ野球の場合、万年Bクラスかつ人気がない球団のチケットは、オークションサイトの世話にならなくても正規の料金で普通に買えるので、チケットゲッターのターゲットにはなりにくい。

問題はAクラスの常連チームだ。

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