江頭敏明・三井住友海上グループホールディングス社長--10年4月からシステム統合、投資削減効果は2~3年後

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江頭敏明・三井住友海上グループホールディングス社長--10年4月からシステム統合、投資削減効果は2~3年後

--統合後のイメージがつかみにくいのですが。

第1次再編(三井+住友)のときは、2年くらいかけて合併を完了しました。しかし、今回の2010年4月の経営統合までには正味1年2カ月。いろいろ考えたのですが、限られた時間の中でスピード感を出すには、あいおいとニッセイ同和とが合併し、それと同時に三井住友海上(MSI)と新合併会社の2社が持ち株会社の傘下に入るのが最も早い。

ただ、保険会社の機能別・分野別の再編に関して、08年から金融審議会での審議が始まっています。この保険業法改正の動向をにらみながら、分割が可能になるならば、その道を選ぶこともありえます。保険は免許事業なので、その意味でも免許がある会社を複数残したほうが絶対に得策なんです。

--機能別・分野別の会社というのは、総合デパートからブティックに変わるというイメージですか。

これはまだ全然、議論していないのであくまで私見です。みずほフィナンシャルグループのように、企業向けと個人向けとを分けるとか、自動車保険のみに特化することもありえるでしょう。地域別という選択もありうるでしょう。それこそ縦横斜めに区切ることができるはずなので、ブティック型の保険事業も考えられるかもしれません。金融審の結果待ちなので、どのような形になるのかは白紙ですね。

ただ、もう一つの選択肢もあって、やはり大きなデパートが望ましいので、最終的に3社を完全に合併、損保1社にすることもありえます。

--スケールメリットと効率化の追求。10年前の第1次再編とやっていることはほとんど同じように見えます。何が違うのでしょうか。

基本的に底流は同じでしょう。違うのは、市場の環境が変わってきたこと。国内の損保事業は成熟状態です。だから、どうやって成長領域を求めていくか。収益源の多様化という意味でも、生保子会社や海外などに先行投資し、経営資源を投入していかなければなりません。

もう一つのポイントが、保険金の不払いや支払い漏れ問題に対応するため、経営資源を品質向上に投入していかなければならないこと。これはかなりコストがかかります。

しかし、経営統合・合併で3社がまとまることにより、経営資源が一挙に増えます。しかも、今回は人員削減をいっさいやりません。その結果、国内外を問わず、新たな事業領域に進出していくため、適材適所に資源を配置できる余裕がうまれるのです。さらにそれぞれが背景に持つ事業、トヨタ自動車であり日本生命保険、三井住友グループが一挙に一つになれば、圧倒的なグループを形成することができるのです。

3社が集まることで商品開発力だって強化できるし、サービス網も拡充できます。大きな市場を背景として、すべてのお客様に品質の高い商品・サービスを提供できる会社になりたいと思っています。

--どのように商品開発力を強化していくのですか。

MSIが持っていて、あいおいやニッセイ同和の持っていない商品があります。その逆もある。それを相互に持ち寄るだけでも商品力は強化できますよ。 

--お互いが持っていない商品といっても、たとえば自動車保険はどこの会社の商品も大きな違いはないように見えます。

各社の自動車保険は結果的に似て非なるものになっていますが、保険は補償や保険料など総合的に決まってきます。3社が一緒になると、お客様の数も大きく増えるので、いろんな計算が可能になるのです。

保険料は危険保険料と経費とから成っています。危険保険料は対数の法則で決められるので、どこの保険会社でも理論的には同じ料率になります。一方、経費部分は効率化とつながりますが、経営統合することではるかに低く抑えられるはずなのです。つまり、今後ますます自由化が進んだとき、価格競争力が非常に強い保険商品を発売できる可能性が高まるということです。

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