松下幸之助は発明王エジソンを尊敬していた 働かなければ遊ぶこともできない

✎ 1〜 ✎ 23 ✎ 24 ✎ 25 ✎ 最新
拡大
縮小

たしかに遊んだり楽しんだりすることは大事である。それを否定しているわけではない。しかし、それ以上に働くことの意義や大切さを知らなければならない。働くだけ働いたうえで遊びも大事だと言うのならいいが、単にこれからは遊ぶことが大事とだけ強調するような話し方はよくない。

今の日本経済は他国と比較してすっかり豊かになった。しかしそれは戦後、国民が協力して粒々辛苦働いたからである、ということも忘れてほしくない。

この世の中、みんなが自分中心になって自分のことしか考えなくなっていくのだとすれば、いったい誰が全体のことを考えるのだろうか。それでなくてもそういう風潮があるのだから、あえてその傾向がますます強くなるようなことはしないほうがいい。「全体を考えるのは、政治家がやればいい、そのための政治家だろう」ということになるのかもしれないが、それでは民主主義とは言えないだろう。

いや、そもそもそのような理屈の前に、自分のことより他人のことを先に考えたほうが、本当は成功への近道なのだという人生の真実が、もう少し広く知られるべきだろう。

本当に成功をした人は仕事と遊びは分けない

しかしおそらく、たまたま、そう何百万人に一人、遊びや趣味で成功した人のことをマスコミが浅薄な理解で記事にしてしまっている場合も多いのである。本当に成功した人ならば「これからは遊ぶことが大事だ」などと、仕事と趣味を分けるような考え方はしない。

本当に好きになれば、それは仕事という名の趣味、あるいは遊びになる。楽しくてたまらなくなる。そこまで至らずに、なぜ成功することがあるだろうか。そこまで至らないから、楽しい趣味と退屈な仕事という、子供っぽい二分法になるのである。

あるいは、そんなに好きでたまらない趣味があるのなら、そちらを本業にして、そのうえで本気で取り組むのもひとつのアイディアである。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT