仙台は「地下鉄東西線」開業で不便になった? 「鉄道」と「バス」の連携に課題

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2015年12月6日に開業した仙台市地下鉄東西線

仙台市に2本目の地下鉄路線・東西線が開業してから、まもなくひと月を迎える。1日平均で6万~7万人が利用しているとのことで、開業前の需要予測(1日8万人)の約8割。東京や大阪などと比べると“鉄道利用”が日常生活に定着していない仙台という土地柄を考えれば、十分健闘していると言えそうだ。

今後、沿線の開発が進んでいけば、当初の需要予測を上回ることも考えられる。いずれにしても、開業前から懸念されていた“赤字路線化”を避けるめども立ったといったところだろうか。

ただ、そんな前途洋々に見える東西線だが、市民からは「不便になった」という声が上がっているのだ。

バスは「地下鉄駅までの足」に

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仙台市で2本目の地下鉄路線となる東西線

仙台市交通局では、東西線開業に合わせて市内のバス路線網の再編を行った。東西線の路線と並行するバス路線を廃止し、一方で東西線の駅と周辺部を結ぶ路線を新設。これにより、地域によっては今までバスに乗れば仙台駅方面まで乗り換えなしで行けたところ、東西線開通後は途中でバスから地下鉄への乗り換えを強いられることになった。いわば、“フィーダー輸送”の体制を整えたというわけだ。

もちろん、このバス路線再編が一概に不便ばかりというわけではない。市交通局が強調するように、仙台駅までの所要時間が短縮される。仙台市内はもともと渋滞がかなりひどく、朝や夕方のラッシュ時には通常バスで30分程度の距離でも1時間以上かかってしまうことがある。これが地下鉄とのフィーダー輸送化することで、平均で15~20分程度にまで短縮されるという。

また、経営という観点からも路線再編の持つ意味は小さくない。従来からバスや自家用車を利用していた人たちを地下鉄利用に誘導するためには、並行路線の廃止という発想は極めて合理的だ。何も手を打たなければ地下鉄利用者が伸びずに赤字が累積し、結果として市バスの運行本数の減少などにつながっていくリスクが高まる。こうしたことからも、バス路線の再編は市交通局の立場から見ても何も不思議ではない。

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