意外?大型連休の宿泊料が高い「本当の理由」 需要と供給の問題ではなかった!

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①どれだけ機会損失があるのか……何組断ったかを推計する

まず、過去の期間中の潜在需要を調べます。旅館の主人は、満室になって以降も何組の予約の問い合わせがあったかを調べました。予約を断ったのは、過去のケースの平均で12組ありました。12組とは、1室平均2人として、24人の宿泊代を失ったということです。

②失った売上高から得られた付加価値はいくらか

失った24人分の宿泊料(売上高)は、2万円×24人=48万円です。

ここで必要な情報は、宿泊者1人当たりの変動費です。料理の材料費などで4000円の変動費がかかるとします。変動費比率は、2万円のうちの4000円、つまり20%(=4000円÷2万円/人)ですから、限界利益率は80%です。

限界利益とは、売上高-変動費で計算される粗利益です。変動費は、外部からの購入した原価の性格があります。材料費、外注費などが代表的な変動費です。売上高から外部購入原価(変動費)を控除した粗利益(限界利益)は、その会社が新たに付加した価値(付加価値)を示しています。よって、限界利益率は、売上高に占める付加価値の割合(付加価値率)という性格があります。

よって限界利益(付加価値)は、38万4000円(=48万円×80%)です。断った顧客の分も宿泊を受けることができれば、38万4000円だけ営業利益アップに貢献できたはずです。

宿泊者の負担額は、1人当たりいくらになるか?

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この38万4000円を取り返すために、実際の宿泊者40 人で負担すると1人当たりいくらになるか。38万4000円÷40人で、9600円になります。

よってお正月期間中の宿泊代を通常の2万円に9600円上乗せし、2万9600円にすれば、失った売上高から得られる付加価値(限界利益)を現実のものとすることができます。

ここで重要なことを補足します。

なぜ、売上高48万円でなく、限界利益38万4000円(1人当たりでは9600円)を按分して、実際の宿泊者に負担させるのかということです。

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