日本企業による投資は、なぜ効率が悪いのか サービス業は低スキル職種しか生み出せず

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しかし日本ではその比率は19%にとどまった。日本企業がKBCへの投資から、他国の企業と同等の恩恵を得ていないからだ。特に問題なのがサービス業のTFPの低さだ。日本では製造業のTFPが「失われた20年間」でも上昇し続けたのに対し、サービス業のTFPは1991年をピークに低下し続けている。

日本ではサービス業は製造業よりも生産性が低く、低スキルの職種しか生み出せないとの考えが依然根強い。一方、米国ではサービス職の約3割がマネジャーやアドミニストレーターといった最高位のスキル職に位置づけられており、その他の先進国でもサービス業が輸出拡大をけん引している。

日本のIT投資はコスト削減が主眼

さらに日本企業はソフトウエアを、戦略的価値を創造する新たな活動よりも、既存業務のコスト削減のためだけに使おうとする傾向がある。

ロバート・コールら研究者の調査によると、IT(情報技術)投資の目的を日本企業に聞いたところ、最も多かった回答は「作業の効率化、低コスト化」で48%、次いで「商品とサービスの開発強化」の22%だった。

一方、米国企業で最多だったのは「商品とサービスの開発強化」の41%で、「ビジネスモデルの改革」の29%がそれに続いた。日本企業では「ビジネスモデルの改革」は7位で、わずか13%だった。

しかし、たとえば光学スキャナーは、小売店の在庫調査費を圧縮するためだけではなく、販売好調だった商品の関連グッズを売り込む宣伝にも活用できるのだ。日本のサービス業の生産性向上にはまず、その意識改革が求められる。

週刊東洋経済1月9日号

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

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