8万円超の「水沢ダウン」がバカ売れする理由 カナダグース相手に気を吐く国産ジャケット

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商品は1つ1つ手縫いで作られている

思わぬ“副産物”もあった。耐水性を追い求めた結果、ダウン内の気密性が高まり、少ないダウン量でも十分な保温性が生まれた。

これにより、軽量で細身のシルエットが実現した。ステッチ部分からダウンが抜け落ちることもなくなった。

幸いにも、デサントはダウンの生産に適した自社工場を有していた。長らくスキーウエアを生産していた水沢工場である。「水沢ダウン」という名前も、工場名に由来している。

近年はウエアの生産が海外にシフトしたため、水沢のラインは稼働していなかったが、羽毛を詰める設備とシーミング(防水テープを貼る工程)のノウハウを持つ、国内では数少ない工場だった。水沢ダウンはこの工場の職人により、1つ1つ手作業で作られている。羽毛はグラム単位で計測し、手で詰めるというこだわりようだ。

開発に1年半を要したダウンジャケットは、2008年に市販された。当時の価格は約7万円。デサントのアウターの平均価格が2万円なので、3.5倍の値段だ。「開発当初は販売を目的にしたものではなかった」(山田ディレクター)が、抜群の保温性とデザイン性が支持され、普及していく。発売当初、数百着だった生産量は、7年間で20~30倍に伸びた。

機能を追求したファッション

昨年秋に開業したデサントブラン代官山店

水沢ダウンで手応えを感じたデサントは2015年秋、新業態の直営店「デサントブラン」を代官山、大阪、福岡に開業した。品ぞろえの中心を成すのが、水沢ダウンを核とするデサントのファッションライン「デサントオルテライン」だ。

「トレンドを追うとファッションブランドにはかなわない。機能をストイックに追求した結果、動きやすく、ラインも綺麗な商品群が生まれた」(山田ディレクター)

新たな直営店を開業した背景には、2つの事情がある。1つは、商品の特性を客に直接アピールする場を増やそうというものだ。

デサントは目下、直営店のほか、自社スタッフが常駐する百貨店やスポーツ店内の「自主管理売場」の拡大に力を入れている。売り上げ全体に占めるこうした売り場の比率を、現在の3割から2020年までに5割へ引き上げる計画だ。

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