スマホは成熟した今だからこそ進化が必要だ NuAns NEOは、最初の会議で方向が決まった

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今回はその金型技術を使うわけではないが、彼らのところに集まってくる数々の素材や成型技術を精査しながら、どのような質感、どのような見栄えを採用するのか。そして、ターゲットを決めてからは、目標達成に必要な多様な素材と生産技術の組み合わせについてアドバイスをいただいた。

並行して行っていたデザイナー選定とデザインコンセプトの構築。これらを組み合わせることで、素材・生産技術に関するパートナーが絞り込まれていった。

これは実際にNEOを開発後、大手メーカーの商品企画担当者などと話をしてわかってきたことだが、新しい生産技術に対するノウハウや情報感度は、トリニティのような電子機器アクセサリを開発するメーカーの方が高い。もちろん、大手メーカーには多くの素材、生産技術が売り込まれるため情報量は多いものの、限界費用を下げるために制約が多く、その多くは見過ごされている。

我々が採用した技術や素材も、決して(業界の中では)目新しいものではない。言い換えれば、これから物づくりに挑戦しようという方がいるならば、そしてそれが手に触れることの多い、デザインや質感、感触へのこだわりが商品性につながるのであれば、外装部品の生産技術に関して情報を集めるといいだろう。

デザインや外装の仕上げが重要に

どんな工業製品も、商品としての成熟が進んでいくと、最終的にはデザインや外装仕上げといった部分が、市場での評価に直結していくようになる。これは筆者自身が、パソコンやAV家電製品などでもダイレクトに感じさせられてきたことだ。

たとえばパソコンの場合、製品への不満の多くは性能に対するものだった。性能が悪いから買わない、あるいは性能が充分でないから買い換える。ソフトウェアの進歩とプロセッサの進歩が凄まじく早かった時代、デザインの美しさは製品選びにおいて決して高い順位に位置する項目ではなかった。

しかし産業全体の成熟が進んでくると、性能よりもデザインや自分の用途に合っているか否かといった、より実践的な要素が重要視されるようになってくる。これはどんな分野でも同じだろう。

次回(第3回)はデザインコンセプトの煮詰めと、そのデザインを実現するために、どんな素材・生産技術を用いたか、パートナーの技術を含めて紹介していくことにしたい。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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