トヨタ「シエンタ」が大ヒットした3つの理由 このコンパクトミニバンに時代が味方した

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あくまで統計上の数字にすぎないかもしれないが、トヨタを代表する箱型のミニバンで販売台数も多い「ヴォクシー」「ノア」「エスクァイア」というヴォクシー系3兄弟と、2代目シエンタの販売台数を比べてみると、シエンタが販売台数を急増させた一方、ヴォクシー系3兄弟の販売はさえない。

ヴォクシー系3兄弟は本日1月6日に衝突回避支援パッケージ「トヨタセーフティセンスC」を新採用するなどのマイナーチェンジを実施予定だ。モデル自体の新鮮味が薄れていた面はあるかもしれないが、トヨタの販売現場からは、「(ヴォクシー系3兄弟の需要が)シエンタに食われている」という声も聞かれる。

少し前まではノアやヴォクシーの車体サイズは5ナンバー(全長4700×全幅1700mm未満)に収まり、コンパクトなミニバンといわれたが、最近では2000cc級のエンジンを搭載していることから、ママ層などから「ボディや排気量が大きすぎる」という声も聞かれるという。同じHV仕様で比較してみると、ノアとシエンタでは概算の支払い総額が60万円ほど違ってくる計算となっており、これも要因かもしれない。

2代目シエンタは意外に高額

しかし、2代目シエンタにも気になる部分はある。それはコンパクトカーにしては結果的に割高になってしまうこともある価格設定だ。シエンタの「ハイブリッドG」という仕様にLEDヘッドランプ、ベーシックカーナビ、サイドバイザー、フロアマットを付属させたとすると、概算支払い総額は276万8952円となる。

日本車全般の傾向でもあるのだが、車両本体価格だけをみると「結構割安感あるなあ」と思わせても、いまどきでは装着率の高い装備の多くがメーカーオプションとなっているケースは少なくない。シエンタの場合では最新安全装備の「トヨタセーフティセンスC」や「LEDヘッドランプ」は単体でのオプション選択ができず、いくつかのオプションとセットでしか選ぶことができない。

これらを装着していき、支払い総額段階になると「えっ!」と思うほど金額が膨らんでしまう。もう少し標準装備化を進めるか、それが無理ならば単体でのオプション選択を可能にして支払い負担を軽減して欲しいところである。

トヨタの看板車種「プリウス」が4代目に切り替わったことで、普通乗用車の車名別新車ランキングで2位以上に食い込むのは難しいにしても、コンパクトミニバンの分野では2016年前半も2代目シエンタの独壇場が続きそうだ。ただ、ホンダがフリードを2016年秋以降にフルモデルチェンジするという情報があり、それ以降は予断を許さない。

日産自動車をめぐっても次期型「キューブ」について後継車はないというのが業界の定説だったが、最近になって3列シートのミニバンとして開発が進んでいるという情報が有力になっている。世界市場重視の日産は国内専売モデルの開発には消極的で、軽自動車やセレナのようなモデルは特例といえる。

つまり、シエンタ、フリードに割って入ろうする次期キューブの情報が流れてきているところに、このカテゴリの将来性を感じるところだ――。国内新車市場においてコンパクトミニバンの競争が一層激化し、その存在が強まっていくのは間違いないだろう。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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