【産業天気図・証券業(ネット専業)】08年度は「曇り」続く、サブプライム契機の市場混迷長期化が先行きに影落とす

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ネット専業証券大手の業績拡大が停滞している。米国のサブプライムローン(信用力が低い個人向け住宅融資)問題をきっかけにした金融市場の混乱が長期化。昨年夏以降、日経平均株価は上値を切り下げる展開が続き、個人を中心としたネット投資家の投資意欲は減退ぎみだ。ネット専業証券業の天気予測は、前回同様に2008年度を通じて「曇り」を予想する。
 日経平均株価は昨年6~7月には1万8000円台に乗せるなど堅調な展開だった。が、サブプライムローンの焦げ付き問題をきっかけにして世界的な信用収縮が発生し8月、11月に急落、2008年に入って米国の景気減速懸念も強まり、3月入って1万2000円を割り込む展開が見られるなど、荒れた相場が続いている。
 ネット専業証券会社にとっては、主力とする株式委託手数料収入が弱含んでいる。「会社四季報春号」では、ネット専業証券各社の今08年3月期の見通しについて、従来(「四季報新春号」)で減益予想に減額したマネックス・ビーンズ・ホールディングス(MBH)<8698>の減益幅を拡大。また、従来は増益予想としていた松井証券<8628>、カブドットコム証券<8703>を減益予想に、SBIイー・トレード証券<8701>を営業益横ばい予想にそれぞれ減額した。
 来09年3月期については松井、MBHが営業小幅減益を予想。カブドットコムは営業益横ばい、イー・トレードは営業微増益の予想としている。米国経済の景気後退が見込まれる中で、輸出を中心とした企業部門が牽引する日本経済にも景気減速懸念が生じており、過去5期連続で経常最高益を更新していた日本企業の業績拡大が鈍化、最悪は減益に転じるとの見方が広がっている。先行きの株式市況について楽観的な見方ができない中で、ネット専業証券の株式委託手数料収入もさらに弱含む可能性があるとみている。カブコム、イー・トレードの予想も、昨年起きたオー・エイチ・ティー<6726>株急落事件で発生した、各社の顧客の巨額損失を貸倒引当金として計上した分の負担が消えることによる浮上効果がなければ、実質的には減益になる可能性もある。
 ネット証券各社をめぐっては、じわりと再編の動きが出ている。
 松井証券は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)<8306>との資本提携交渉を07年初から継続。MUFGはグループ内のネット専業証券のカブドットコム証券への出資比率を07年4月に40%超まで高めたが、同12月19日を期限とするTOBで50%超まで比率を高めた。また、SBIイー・トレード証券は、株式交換で8月にSBIホールディングス<8473>の完全子会社となり、上場廃止となる。07年10月に対面取引主体のSBI証券と合併した。
 なかなか具現化しないが、日興コーディアルグループ(CG)<8603>が出資するMBHの動きにも注目だ。07年春のTOB(株式公開買い付け)成功で、米シティグループ入りした日興CGは、08年1月に国内初の三角合併方式による株式交換でシティの完全子会社となった。マネックスの松本大社長は、日興CGがシティ傘下入りする前後から、新たな提携先を模索していることをコメントしており、同社の出方によっては、他のネット専業大手との再編に発展する可能性も残っている。
 このほか、非上場の楽天証券ホールディングスや、野村ホールディングスグループのジョインベスト証券なども含めた今後の動きも注目されるところだ。
【武政 秀明記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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