キリンブランドで世界制覇するつもりはない キリンホールディングス社長 三宅占二

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--中国ではアサヒとサントリーが青島ビールをめぐって火花を散らしていますが、キリンの中国戦略は明確に見えていません。

ビール生産量世界一で、二ケタ成長を続ける中国市場から撤退するつもりはない。ただ、中国市場は重要でも、今ここに投資するというプライオリティはない。今後、参戦するチャンスがあるかもしれないが、今は様子見の時期だろう。そのせいで、キリンの存在感は薄くはなっているが、華潤や青島など中国資本の大手ビールメーカーがどんどんできている中、われわれの規模で参戦してもビジネスにならない。競合他社のことを言っても意味がない。われわれはわれわれのやり方でやっていくまでだ。

──では、キリンが目指す海外での立ち位置とは。

そもそもわれわれは、コカ・コーラやハイネケンのような巨大グローバル企業ではない。世界に通じるブランドを持つ企業でもない。日本のビールメーカーから、トヨタ自動車やソニーのような企業が生まれるとも思えない。「キリンブランドにはこだわるが、キリンブランドで世界制覇するつもりはない」と言うと、皆がっかりした顔をする。だが、自分の実力を認識したうえで、キリンらしいグローバル戦略を立てることが重要だ。

その戦略が総合飲料化。海外展開の遅れた日本のビールメーカーは、ビールも清涼飲料も両方つくれることが強み。採算面からいえば酒類専業のほうがいいが、われわれは出遅れた分、成長を取るのか利益率の絶対値を取るのか、つねに選ばざるをえない。そこも次期中計では、きちんと示していくつもりだ。

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(聞き手:鈴木雅幸、張 子溪 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2012年9月1日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


みやけ・せんじ
1948年生まれ。70年に慶応義塾大学経済学部卒業、キリンビール入社。営業畑を歩む。2007年から同社社長。09年、親会社のキリンホールディングス副社長を経て、10年3月より現職。

 

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