男性議員の育休宣言にイクメン議員から反論 働きながら子育てしてこそ分かることがある

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しかしその一方で、男性国会議員の育休制度には「国会議員が率先して休暇制度を作って利用するだけで、果たして一般の実情を変えることができるのか」と懐疑的だ。

柚木氏の妻は航空会社に勤務しており、長女の育休が終わると職場復帰した。以降、柚木氏は妻の留守中には幼い子供を抱いて、東京と地元・岡山を何度も往復している。

「大変だったけど、たくさん発見があった。たとえば小さな子供を連れて外出する時だ。女性のトイレにはベビーホルダーはあるが、男性のトイレにはないいために、男性がひとりで小さな子供を連れて外出するのに非常に不便。こうした改善すべき点をひとつひとつ見つけて政策に反映していくことこそ、政治家の職責だと思う」

長男が生まれた時には、10カ所以上の保育園に直接出向いたという。

「自分で保育園を探すことで、待機児童問題を痛感した。また子供を連れて保育園まで行くことで、交通機関を使う不便さも経験できた。男性の自分でも体力的にこれほど大変なのだから、妻や他のお母さんならもっと大変だろうと思った」

柚木氏はこうした実感が大事だと主張する。

「育児をするために休みを取るのが政治家にとって重要ではない。どうすれば子育てをしやすくなるのかを探すことこそ、政治家にとって大事だ。そのために必要な制度を考え、社会整備をしていく。体験なくして有効な政策は生まれない」

制度の問題ではない

実際に育児・介護休業法により、男性労働者も育休を取得できる対象なっているが、男性の育休取得率は2.3%にすぎない(2014年度厚生動労省「雇用均等既報調査」)。制度自体の問題ではないことは明らかだ。柚木氏は主張する。

「男性の育休取得率を上げるためにまずやるべきことは、企業側に育休を取らせやすい環境を整えることだ。たとえば補充要員を確保するために、給与支援や採用の補助、人材バンクの創設も含めて重層的に考えていかなくてはいけない。こうした観点を持たずに、国会議員が率先して休暇を取るだけで男性の育休取得が進むと考えるなら、意識が遅れ過ぎていると言わざるをえない」

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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