事後レポ

設計開発のグローバル化がもたらす
エンジニア競争時代

“ソフトウエア化”するモノづくり 日本のエンジニアはいかに付加価値を創出するのか?

さまざまなモノがインターネットにつながるIoT時代のモノづくりは、モノだけでなく、情報やサービスを含めた価値をユーザーに提供することが求められる。モノづくりにおいても製品・装置に組み込まれるソフトウエアの重要性が増す中で、設計開発は、海外新興国の安価なリソースを活用した、グローバルかつオープンな体制への移行が求められている。「イノベーションカンファレンス 設計開発のグローバル化がもたらすエンジニア競争時代」では、日本の製造業とそこで働くエンジニアが、今後のグローバル競争を勝ち抜くためにどのような方向に進むべきか、について検討が行われた。
共催:アクセンチュア、東洋経済新報社

【特別講演】コネクテッドインダストリー
ボッシュにおけるインダストリー4.0

ボッシュ 専務取締役
満岡隆一

 ボッシュの満岡隆一氏は、「大量生産から、多様化するニーズに対応するカスタマイズされたモノづくりへ」という流れを指摘。「IoTの進展によるネットワーク化に追従し、ビジネスモデルの変化に対応していくことが必要になります」とインダストリー4.0の背景を語った。

 ボッシュは、サプライチェーンをIoTでつなぎ、ジャスト・イン・タイムの生産と物流最適化を目指す「未来の工場」のカギとして、顧客の多様な要求に対応する生産ラインとして「迅速な統合と柔軟な構成」、工場内やバリューストリームの情報をつなぐ「オープンスタンダード」、部品自立搬送やワークステーションが自立して動くなどの「分散型インテリジェンス」、設計データなどのバーチャル上のデータと現実のデータ、状況などを比較して補正する「仮想リアルタイム表現」、企業の枠を超えたネットワークの万全なセキュリティ構築を図る「価値創成ネットワークの確保」、バリューストリーム上の全情報をデータベース化してエンジニアリングを行う「デジタルライフサイクル管理」、そして最も重要な要素は「カギを握るプレーヤーとしての『人』」――の7点を挙げる。満岡氏は「人工知能やロボットによって自動化しつつも、最終判断は“人”がやります」と、工場を無人化する考え方との違いを強調する。

 ボッシュでは工場に、約2000種類の部品で約300種類の製品を作れる「マルチ生産ライン」、ワイヤレスでネジの締め付けデータをITインフラに直結する「ナットランナー」を開発し導入。明るさ・加速度などを感知する小型センサー(MEMS)を年15億個のペースで供給している。満岡氏は「インダストリー4.0の技術的取り組み内容は、日本各企業が取り組んでいる活動とそれほど大きな違いは無いと思います。日本が大きく遅れているとも思いません。ただし、つながるモノづくりを成功させるために各企業がオープンな姿勢でノウハウを出し合う、協力してインダストリー4.0の実現に向けて活動を推進している点はドイツが先を行っていると思います」と述べた。

【問題提起】「3つの黒船」がR&Dを開放に向かわせる
聖域という名の“井戸”からの脱出 その方法とは?

アクセンチュア
製造・流通本部
マネジング・ディレクター
相馬修吾

 アクセンチュアは、インダストリアルIoT(IIoT)への取り組みとして、航空機エンジンに取り付けたセンサーから得たデータを、燃料消費やメンテナンスコスト削減に生かす合弁会社を設立。走行に応じてタイヤ使用料を払うタイヤメーカーの「タイヤ・アズ・ア・サービス」にインフラ提供している。アクセンチュアの相馬修吾氏は「IoT時代は、“モノ”を“コト”にしてビジネス効果を出す潮流があります」と話す。

 また相馬氏は、このトレンドにより「ソフトウエア設計を取り巻く環境は、ネットワークにつながるセンサーの幾何級数的増加に伴う開発量の爆増、外部と技術連携するオープンイノベーションの必要性の高まり、リソース(人材)不足という『3つの黒船』の来襲を受けています。日本メーカーは、設計開発拠点を新興国に設けるなど、グローバル化で事態の打開を図るが、順調とは言えない」と指摘。「付加価値の低い量産・派生開発の分野は、一極集中・凝縮・すり合わせから、分散・分業・組み合わせの手法に移行すべき」であり、「外部との連携を進めるには、いわゆる“大部屋のワイガヤ”に代表される設計開発領域の密結合解体が必要です」と訴えた。

 グローバル化成功のカギとして、設計開発のプロセスを可視化し、手順を細分・標準化する「設計開発の工業化」を提言した相馬氏は、「日本人エンジニアは、付加価値の高い技術にシフトすることで生き残りを図ることになります。可視化によって、注力すべき価値のある技術が何かということも見えてくるでしょう」と話した。

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