MRJが4度目の納入延期、今回の理由は何か 三菱重工業、開発費3000億円の回収に暗雲

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愛知県で記者会見し、開発責任者の岸信夫・三菱航空機副社長(右端)がスケジュール変更の理由などを説明した(撮影:尾形文繁)

納期の先送りは今回で4度目。設計変更や安全認証に向けた準備作業の遅れから、これまでも度重なるスケジュール延期を余儀なくされてきた。三菱の正式な延期発表を受け、ANAは「非常に残念だが、安全を第一に万全なる準備のうえ、完成度の高い機体が納入されることを願っている」との公式コメントを出した。

今回の納入延期を巡っては、主翼の強度不足などを理由とする報道が先行したが、岸副社長は「3回の飛行試験で、何らかの深刻な問題点が見付かって日程を変更したわけでは決してない」と強く否定。強度で改善すべき点があり、現在、飛行試験機の主翼付け根部分や胴体部品の補強改修を行っていることは事実だが、「この程度の改修は珍しいことではなく、1月中には飛行試験を再開する」と説明した。

強敵エンブラエルとの受注競争で厳しい立場に

三菱にとって、開発がさらに長期化してしまったことは大きな誤算だ。まず第一に経済的損失。現在、MRJ事業には開発・販売を担う三菱航空機、生産を担当する重工本体の合計で約2300人が関わっており、年間の人件費だけで200億円近い。開発期間がさらに長引くことで、そうした固定費負担が重くのし掛かる。また、納期遅延の影響を被るANA、トランス・ステーツへの違約金問題も避けられない。

それ以上に懸念されるのが、今後の受注への悪影響だ。MRJと同じリージョナルジェット旅客機のメーカーは、エンブラエル(ブラジル)、ボンバルディア(カナダ)、スホーイ(ロシア)、COMAC(中国)の4社。このうち、最大の強敵はエンブラエルだが、MRJの開発長期化により、三菱は受注競争でより厳しい立場に立たされる。

エンブラエルはリージョナル機の老舗かつ最大手。現行機「Eジェット」(2004年就航)は累計受注が1400機を超えるベストセラー機で、世界で約70のエアラインが導入している。さらに同社は現在、高い燃費性能を謳ったMRJに対抗するため、Eジェットの改良型後継機となる「E2」シリーズを開発中だ。

現行のEジェットは搭載エンジンが旧世代のもので、燃費性能が最大の弱点だった。MRJと同じ米プラット&ホイットニー社の最新鋭エンジンの採用により、後継機E2の燃費性能はMRJに数%差まで肉薄する見込み。まず2018年前半に97~106席の「190ーE2」、翌年に118席~132席の「195ーE2」、2020年に80席~90席の「175ーE2」の機体引き渡しが始まる計画だ。

このうち、MRJと機体サイズが完全に競合する「175ーE2」で言うと、エンブラエルがE2の開発着手を正式表明した2013年6月当時、MRJは納入開始時期で5年のアドバンテージがあった。それが2013年夏と今回の度重なるスケジュール延期によって、2年の差にまで縮まってしまった。

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