三井物産が融資契約結んだチリ銅公社と資源メジャーの係争決着(1)三方一両損で資源メジャー独り勝ち?

三井物産が融資契約結んだチリ銅公社と資源メジャーの係争決着(1)三方一両損で資源メジャー独り勝ち?

チリの銅鉱山会社アングロ・アメリカン・スール(AAS)株式を巡る、同社親会社アングロ・アメリカン(英国、AA)とコデルコ(チリ銅公社)の争いが解決した。コデルコは三井物産と合弁を設立しAASの株式29.5%を所有することになる。

もともとコデルコはAASに対し、割安な価格でその49%の株式を取得できるオプションを持っていた。ところがAAは、その後の投資によりAASはオプション取得時の会社と同じではなくなり、コデルコの権利は消失したとして、2011年11月に三菱商事へAAS株式24.5%を53.9億ドルで売却してしまった。三井物産から上限67.5億ドルの融資を受けてオプション行使を考えていたコデルコはAAを提訴。以降、コデルコとAAは法廷外でも解決策を探っていた。

今回の合意は次のようなスキームによる。まず、コデルコは三井物産から19億ドルの短期融資を受けて、そのうちの17億ドルでAAからAAS株式24.5%を取得する。この時点でAASの株主構成はAA51%、コデルコと三菱商事が各24.5%。コデルコは当初のオプションで取得できるはずのシェア49%を半分にする代わりに値引きを受ける(67.5億ドル÷49%=1.37億ドル/%に対し17億ドル÷24.5%=0.69億ドル/%)。さらに、取得と同時にAAS株式を三井物産との合弁会社アクルクスに現物出資する。ここまでは今日中にも終了する。

次に、9月中にも、三井物産の子会社が11億ドルをアクルクスに出資し、アクルクスはその全額でAAS株式5%をAAと三菱商事から取得する。5%の内訳はAA所有分0.9%、三菱商事4.1%でこの時点でのAASの株主構成はAA50.1%、アクルクス29.5%、三菱商事20.4%だ。アクルクス(実質的には三井物産)が取得するAAS株式の1%当たり単価は2.2億ドルで三菱商事が取得した価格と同じ。つまりそれが市場価格ということになる。コデルコが現物出資したAAS株式はアクルクスの帳簿上は市場価格に引き直されて約54億ドルへ価値が増加するため、11億ドル出資の三井物産とのアクルクス株式シェアはコデルコ83%、三井物産17%という形だ。

ここまでがスキームの第1段階。誰が得をして誰が損をしたのかを判断するのは実は難しい。実現損が発生したわけではなく、機会利益の逸失がすべてだからだ。コデルコの場合、49%のはずが半分になってしまった。ただ、取得単価もほぼ半値になっているのでそれほど大きな「損した」感はないだろう。三井物産はどうか。今回、コデルコとの間で鉱山の生産物29.5%を引き取る権利を得ることで合意した。仮にコデルコが49%のシェアを持てばこうした権益量はもっと増えたに違いないが、あくまで仮定の話だ。

三菱商事もシェア減少分は買った価格で戻ってくるのだから、実現損が出たわけでない。ただ、持分法対象の20%近くになるまでAAS株式を召し上げられてしまったのだから、プライドは傷ついたろう。なぜ、コデルコとAAの2社が合意した以上にアクルクスに株式を売ることになったのか。コデルコが、彼らにすればAA側に付いたと見える三菱商事と同シェアで納得できないことは容易に想像がつく。三菱商事のシェアダウンが和解の条件だった可能性もある。

結局、AASの所有権を維持しながら、保有するAAS株式25.4%を市場価格で売却し約73億ドルを手にしたAAが得をしたように見える。三井物産のコデルコ向け融資上限額を5億ドル以上上回る。ここまで見通して三菱商事に売却したとしたら、気の毒なのは三菱商事である。

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